コラム「企業法務相談室」一覧

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  • 2017/03/24 労働問題 内部通報制度民間事業者向けガイドライン改正のポイント(田島正広弁護士)

    内部通報制度民間事業者向けガイドライン改正のポイント

    1 はじめに

     平成 18 年4月の公益通報者保護法(以下「法」といいます。)施行後も,同法そしてこれを受けた企業の内部通報制度がその機能を十分には発揮できておらず,近時の企業不祥事でも内部通報制度の機能不全が見られるばかりか,通報者に対する不利益処分事例もなお見られることから,消費者庁においても通報制度の実効性向上が喫緊の課題と認識され,先般,「公益通報者保護法を踏まえた内部通報制度の整備・運用に関する民間事業者向けガイドライン」(以下「ガイドライン」といいます)が改正されました。

    2 ガイドライン改正のポイント

    (1)通報対象事実の拡大

     改正ガイドラインにおいては,通報者の匿名性の確保等及び通報者に対する不利益な取扱いの禁止が徹底されると共に,経営幹部が果たすべき役割が明確化され,経営幹部から独立性を有する通報ルートの整備及び内部通報制度の継続的な評価・改善について明記されました。     

     その中でも最も顕著な点としては,通報対象事実に法が対象とする法令違反のみならず内部規程違反も含めることが適当とされたことが挙げられます。法が適用対象としない内部規程違反をはじめとする企業倫理違反行為によっても,企業は社会的にひんしゅくを買うことが十分懸念され,ブランドイメージの毀損をはじめとする大きな経済的損失を受けることがあります。内部規程違反をも通報対象とすることは法改正なしに事業者に強制できることではありませんが,任意の取組みを推奨することで実質的に法体系の裾野を大きく拡大するものであり,企業として積極的に受け止めるべきところといえます。

    (2) 内部通報制度の意義と経営トップの責務

     内部通報制度の整備・運用は,組織の自浄作用の向上とコンプライアンス経営の推進,ひいては企業価値の向上と発展に資するものであり,同時に安全・安心な製品・サービスを提供することが,企業の社会的責任と社会経済的利益の観点から重要であることが明らかにされました。   

     また,制度整備・運用における経営トップの責務にも力点が置かれ,通報者への不利益取り扱いは許されないこと,企業倫理は利益追求に優先されるべきこと等につき,経営トップの全社的なメッセージの発信が求められています。

    (3) 通報制度の整備と外部窓口の活用

     通報制度の実効性確保の観点から,外部窓口として法律事務所の他,民間の専門機関への委託を採り上げた他,関係会社・取引先を含めた制度の整備・運用状況の定期的チェックと助言の必要性にも論及しています。外部窓口担当者による秘密保持を徹底し,通報者の特定可能な情報は通報者の書面による明示の同意なくして事業者に開示してはならない等の措置が必要とされています。

     通報窓口の利用者としては,取引先の従業員や退職者を含めて幅広く設定することが望ましいものとされ。経営幹部から独立性を有する社外取締役や監査役等への通報ルートの整備が適当とされる他,中立性・公正性からの疑義あるいは利益相反が生じる虞のある顧問弁護士等の外部窓口での起用は避けることが必要とされています。

    (4) 調査・是正措置と通報者保護

     調査・是正の実効性確保のため,調査担当部署に社内的な調査権限と独立性付与,そのための人員・予算の付与が必要とされた他,当該部署の調査に従業員が協力すべきことの内部規程への明記が求められ,是正措置と再発防止策,さらには関係行政機関への報告等も求められています。また,調査・是正措置の実効性確保のため,調査担当者のスキル向上のための十分な教育・研修や,通報対応状況に関する中立・公正な第三者等による検証・点検等を行うことが望ましいとされています。

     そして、通報制度の実効性確保のため通報者保護の徹底を図るべく,通報者の所属・氏名等の情報共有が許される範囲は必要最小限にすべきとされ,その特定につながり得る情報は通報者の書面・電子メール等による同意がない限り,この範囲を超えて開示してはならないものとされます。かかる同意取得に際しては,開示に伴う不利益を明確に説明すべきものとされ,また通報者を探索してはならないことを明確にして,全社的に周知徹底すべきとされています。

    (5) 通報受付・調査実施における秘密保持

     専用回線の設置,勤務時間外の個室・事業所外での面談の実施等により通報者の秘密を保護することが必要とされ,通報事案関連資料閲覧者の範囲を必要最小限に限定すること,当該記録の施錠管理,電磁的な情報セキュリティ対策等が求められています。また,通報者本人からの情報流出を防止するため,情報管理の重要性を十分に理解させることが望ましいものとされます。個人情報保護の徹底を図りつつ通報対応の実効性を確保するため,匿名通報も受け付けることが必要とされ,その際通報者と通報窓口担当者が双方向で情報伝達を行い得る仕組みを導入することが望ましいものとされています。

    (6) 解雇・その他不利益な取扱いの禁止

     事業者は,法及び内部規程の要件を満たす通報者のみならず調査協力者に対しても,解雇・その他の不利益取扱いをしてはならないこととされ,それが判明した場合には適切な救済・回復措置が求められています。違反者や通報に関する情報を漏らした者等に対する懲戒処分等の適切な措置の実施と,被通報者への事前の注意喚起による違反行為の予防が求められています。

     解雇・その他の不利益な取扱いがなされないよう通報者等に対するフォローアップを行うに際しては,経営幹部が責任をもって不利益取扱いを救済・回復するための適切な措置を講じることが求められ,是正措置及び再発防止策の確認等,必要な措置を講じることとされています。関係会社・取引先の従業員からも通報を受け付ける場合には,当該会社・取引先に対して通報者等が不利益な取扱いを受けないよう可能な範囲で必要な措置を講じることが望ましいものとされます。

    (7) 社内リニエンシー制度

     法令違反行為等の早期把握によるコンプライアンス経営の推進の観点から,調査開始前に自主的に違法行為等を内部通報したり,その調査協力をした従業員に対して,その状況に応じて懲戒処分等を減免する仕組みを整備することも考えられるものとされています。これは独占禁止法分野で導入されているリニエンシー制度に類似するもので,社内リニエンシー制度と呼ばれています。

    (8) 内部通報制度の評価・改善

     内部通報制度の実効性向上のため,制度の整備・運用状況・実績,周知・研修の効果,従業員等の制度への信頼度,本ガイドラインに準拠しない事項がある場合にはその理由,今後の課題について,内部監査や中立・公正な第三者機関等を活用した客観的な評価・点検の定期的な実施と,これを踏まえた経営幹部の責任での制度の継続的改善が求められています。

     また,通報制度の実効性は企業価値の維持・向上に関わることから,消費者,取引先,従業員,株主・投資家,債権者,地域社会等のステークホルダーにとっても重要なため,上記評価・点検の結果はCSR報告書やウェブサイトにおいて積極的にアピールすることが適当とされています。

    3 リスクマネジメントの観点からの通報制度の積極的活用

     以上を総括すると,今回のガイドライン改訂においては,内部通報制度の整備・運用が企業の自浄作用とコンプライアンスの向上に寄与し,企業価値の向上と永続性確保に資することが正面から説かれると共に、通報制度を実際に生かすための具体的施策が明らかにされたといえます。

     ところで、日頃から内部通報制度を真摯に機能させている企業においては、通報者が不利益処分を受ける虞もないでしょうし、通報対象事実に関する証拠隠滅の虞もないといえることから、会社外部の第三者に対するいわゆる3号通報の要件は直ちには満たさないといえます。この場合、社外へのいきなりの外部告発は、懲戒の対象ともなる違法な行為と評価されることになり得るので、企業としては、まさに自ら不祥事を把握して自浄作用を発揮する機会を確保できているといる訳です。

     自浄の機会もないままに、いきなりマスコミから不祥事を告発され、不祥事対応が後手に回ってしまうと、マスコミが報じない限りは不祥事を隠蔽しようとしていたとの印象を市場に与えかねず、不信感はブランドイメージを大きく毀損することになります。こうした後手の対応は、不祥事対応の場面で最もしてはいけないことです。反対に、まだマスコミが報じていない不祥事を自ら公表する企業は、その瞬間は相応の経済的損失を受けるとはいえ、その真摯な経be営姿勢は、他には不祥事はないだろうとの信頼を市場に生み出すところともなる訳です。

     こうして、企業としては消極的形式的に、いわばコンプライアンスらしさの隠れ蓑のために通報制度を運用するのではなく、むしろ通報制度が企業不祥事に関する情報を早期に経営陣に伝達し、自浄作用を発揮するための重要な契機であることを自覚して、これを企業の将来の発展のために積極的に運用すべきといえるでしょう。それこそが、経営陣の善管注意義務、内部統制システム構築義務の履行を確たるものとすることになります。同時に通報の現場で多く観られる雇用環境に関する通報を通して、従業員の雇用環境は守られるといえます。さらに、通報制度が十分に機能するようになれば、もし一部の従業員が何か不正をしようと思っても、その発覚を恐れてその実行を断念することが期待できます。まさに、抑止力として通報制度が機能することが、企業のあるべき姿といえるでしょう。


    弁護士 田島 正広


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  • 2016/09/21 商取引 インサイダー取引規制の適用除外(知る前契約・計画)について(西川文彬弁護士)

    インサイダー取引規制の適用除外(知る前契約・計画)について

    Q 平成27年9月の有価証券の取引等の規制に関する内閣府令の改正により,インサイダー取引規制の適用除外となる「知る前契約・計画」の範囲が拡大されたと聞きました。新しく設けられた制度の内容について教えてください。

    A  知る前契約・計画とは,会社関係者等が,未公表の重要事実を知る前に,売買の予定等の必要事項を記載した契約・計画を作成する等の手続を履践することで,その後,重要事実を知ることになっても予定通り売買が可能となる制度です。

    従前は,知る前契約・計画であっても,有価証券の取引等の規制に関する内閣府令(以下,「取引規制府令」といいます。)の個別列挙に定める類型に当てはまらないものについてはインサイダー取引規制の適用除外(金融商品取引法166条6項12号)となりませんでしたが,平成27年9月の改正により包括的な適用除外の規定(取引規制府令59条1項14号)が追加されました。

    包括的な適用除外の要件の概要は,以下のとおりであり,その全てを充足する場合にインサイダー取引規制の適用が除外されます。

    ①未公表の重要事実を「知る前」に締結・決定された契約・計画に基づく売買であること

    ②未公表の重要事実を「知る前」に,かかる契約・計画の写しを証券会社に提出する等したこと

    ③当該契約・計画の中で,売買の具体的内容(期日,期日ごとの売買の数量又は総額)が定められているか,又は裁量の余地がない方式により決定されること

    1 知る前契約・計画とは

    ~以下,金融商品取引法166条6項12号を引用~

     上場会社等に係る第一項に規定する業務等に関する重要事実を知る前に締結された当該上場会社等の特定有価証券等に係る売買等に関する契約の履行又は上場会社等に係る同項に規定する業務等に関する重要事実を知る前に決定された当該上場会社等の特定有価証券等に係る売買等の計画の実行として売買等をする場合その他これに準ずる特別の事情に基づく売買等であることが明らかな売買等をする場合(内閣府令で定める場合に限る。)

    ~引用終了~

     未公表の重要事実を知る前に売買の決定がされている場合においては,会社関係者等と一般投資家との間に情報面の格差がなく,規制する必要がないと考えられるため,平成27年9月の内閣府令の改正により,後記2のとおり,適用除外に関する包括規定が新設され,その適用範囲が拡大されました。


    2 知る前契約・計画の要件

    (1)改正により新設された内容(注:下線引用者)

    ~以下,取引規制府令59条1項14号を引用~

    前各号に掲げる場合のほか次に掲げる要件の全てに該当する場合

    イ 業務等に関する重要事実を知る前に締結された特定有価証券等に係る売買等に関する書面による契約の履行又は業務等に関する重要事実を知る前に決定された特定有価証券等に係る売買等の書面による計画の実行として売買等を行うこと。

    ロ 業務等に関する重要事実を知る前に,次に掲げるいずれかの措置が講じられたこと。

    1) 当該契約又は計画の写しが,金融商品取引業者(法第二十八条第一項に規定する第一種金融商品取引業(有価証券関連業に該当するものに限り,法第二十九条の四の二第十項に規定する第一種少額電子募集取扱業務のみを行うものを除く。)を行う者に限る。(2)並びに第六十三条第一項第十四号ロ(1)及び(2)において同じ。)に対して提出され,当該提出の日付について当該金融商品取引業者による確認を受けたこと(当該金融商品取引業者が当該契約を締結した相手方又は当該計画を共同して決定した者である場合を除く。)。  

    2) 当該契約又は計画に確定日付が付されたこと(金融商品取引業者が当該契約を締結した者又は当該計画を決定した者である場合に限る。)。

    3) 当該契約又は計画が法第百六十六条第四項に定める公表の措置に準じ公衆の縦覧に供されたこと。

    ハ 当該契約の履行又は当該計画の実行として行う売買等につき,売買等の別,銘柄及び期日並びに当該期日における売買等の総額又は数(デリバティブ取引にあっては,これらに相当する事項)が,当該契約若しくは計画において特定されていること,又は当該契約若しくは計画においてあらかじめ定められた裁量の余地がない方式により決定されること。

    ~引用終了~

    (2)各要件について 

    ア 「知る前」の意義   

      「売買等を行う時点において知っている未公表の重要事実を知る前」を意味すると考えられています(金融庁・証券取引等監視委員会「インサイダー取引に関するQ&A問5」)。

      すなわち,売買の計画段階において,未公表の重要事実Aを知っている場合,Aが公表された後において売買することを計画して,証券会社に計画書の写しを提出するなどしておけば,その間に,未公表の重要事実Bを知ったとしても,Aが公表又は中止されていれば,Bの公表前に当初の計画に基づいて売買を実行できることになります。

    イ 「として(契約・計画に基づく売買)」の意義

      契約の履行又は計画の実行として売買を行う必要があり,契約・計画された売買の恣意的な一部実行や一部中止は認められないと考えられます。なお,契約・計画を中止・撤回して売買をしないことは原則として認められるとされています。

    ウ 証券会社(金融商品取引業者)への提出等の意義

      未公表の重要事実を知った後に契約書や計画書がねつ造されることを防止するために設けられたものになります。

      なお,証券会社においては,提出日を確認するだけで,それ以上に内容を確認すること等は求められていません。

    エ 「期日」の意義

      複数の日でも構いませんが,裁量の余地があるような定め方は認められません。

      すなわち,「●●年●●月●●日」や「●●年●●月●●日以降,東京証券取引所における終値が初めて●円を超えた日の翌営業日」等という定めは認められますが,「●●年●●月●●日まで」や「●●年●●月●●日から▲▲年▲▲月日▲▲日までの間」という定めは認められません。なお,「●●年●●月●●日から▲▲年▲▲月日▲▲日まで毎営業日100株」などという期日ごとの定めがある場合には裁量の余地がなく認められます。

    オ 「期日ごとの数量又は総額」の意義  

      期日ごとに数量又は総額を定める必要があります。すなわち,特定の日(1日)における「総額●●円」,「●●株」という定めは認められますが,「1000株以上1万株以下」や「●●年●●月●●日から▲▲年▲▲月日▲▲日まで総額1億円」という定めは認められません。


     これまでは,会社関係者等が未公表の重要事実Aを知っている場合,Aが公表された後において売買しようとしても,その間に未公表の重要事実Bを知ってしまうことで,売買の機会が失われることがありましたが,上記改正は,これまで困難であった自社株売買の機会の確保を図るものになります。

    弁護士 西川 文彬


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  • 2016/02/05 企業経営 特別支配株主の株式等売渡請求(西川文彬弁護士)

    特別支配株主の株式等売渡請求

    Q 平成26年会社法改正により,特別支配株主の株式等売渡請求という制度が新設されたと聞きました。どのような制度か教えてください。


    A この制度は,対象会社の総株主の議決権の10分の9以上を有する株主(特別支配株主)が,対象会社に対して一定の事項を記載した通知を行い,対象会社において,その承諾や売渡株主に対する通知・公告等の手続を経ることにより,特別支配株主が少数株主の有する株式等(株式,新株予約権,新株予約権付社債を指します。以下,同じ。)の全部を,少数株主の個別の承諾なく,直接,金銭を対価として取得すること(キャッシュアウト)を可能にするものです。

    1 制度の概要

     この制度は,特別支配株主が対象会社の株主総会決議を経ることなく,少数株主の有する株式等(株式,新株予約権,新株予約権付社債を指します。以下,同じ。)の全部を,少数株主の個別の承諾なく,少数株主から直接,金銭を対価として取得すること(キャッシュアウト)を可能にするものです。
     キャッシュアウトの利点としては,長期的視野に立った柔軟な経営の実現,株主総会に関する手続きの省略による意思決定の迅速化,株主管理コストの削減が挙げられます(坂本三郎編著『一問一答平成26年改正会社法』251頁(商事法務,第2版,2015年))。
     この制度により,これまでのキャッシュアウトの手法である全部取得条項付種類株式の取得において,常に,株主総会の特別決議が要求されていたこととは異なり,機動的なキャッシュアウトが可能になりました。

    2 要件

    ? 特別支配株主
     特別支配株主とは,対象会社の総株主の議決権の10分の9以上を有する者をいいます(会社法(以下,「法」といいます。)179条1項)。
     議決権保有割合の算定に当たっては,特別支配株主となる者が自ら保有する議決権に加えて,その者の特別支配株主完全子法人(特別支配株主となるものが発行済株式の全部を有する株式会社その他これに順ずるものとして法務省令で定める法人)が有する議決権も合算されます(同条1項)。
     また,上記,議決権保有割合は,対象会社に対し,株式等売渡請求をする旨を通知するとき,その承認を受けるとき,売渡株式等の全部を取得する取得日において,満たしている必要があります(法179条の3第1項,法179条の9第1項)。

    ? 対象会社
     対象会社は,公開会社に限られず,公開会社でない場合にも利用できることとされています。なお,清算株式会社は,対象会社となることはできません(法509条第2項)。

    ? 対象となる株式等
     株式売渡請求は,対象会社の株主(対象会社及び特別支配株主は除きます。以下,売渡請求の対象となる株主を「売渡株主」といいます。)の全員に対して行わなければなりません(法179条第1項本文)。なお,既に特別支配株主の支配が及んでいる特別支配株主完全子法人については,特別支配株主が,同法人に対して株式売渡請求をしないことを選択することができます(同条第1項ただし書,法179条の2第1項第1号)。
     そして,株式売渡請求は,売渡株主の有する対象会社の株式の全部(種類株式発行会社であれば全種類株式)について行わなければなりません(法179条第1項)。
     また,特別支配株主は,株式売渡請求と併せてする場合に限って,新株予約権者に対して,新株予約権の売渡請求をすることもできます(同条第2項)。なお,この請求が新株予約権付社債に付された新株予約権の場合,当該新株予約権の募集事項に別段の定めがある場合を除き,社債部分についても売渡請求をしなければなりません(同条第3項)。

    3 手続 

    ? 手続の流れ
    ? 特別支配株主から対象会社への通知
     特別支配株主は,株式等売渡請求をしようとするときは,対象会社に対し,株式等売渡請求の条件(売渡株主に当該売渡株式の対価として交付する金額又はその算定方法,株式を取得する取得日等)を定め,対象会社に通知する必要があります(法179条の2,同法179条の3)。

    ② 対象会社による承認
     特別支配株主は,株式等売渡請求につき対象会社の承認を受けなければなりません。対象会社が取締役会設置会社である場合は,承認するか否かの決定は,取締役会の決議によらなければなりません(法179条の3第1項)。
     なお,対象会社が種類株式発行会社である場合,株式等売渡請求の承認が,種類株式の種類株主に損害を及ぼすおそれがあるときは,定款の定めがない限り,当該種類株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議が必要になります(法322条第1項第1号の2,同条第2項)。

    ③ 売渡株主等に対する通知・公告等
     対象会社は,特別支配株主の株式等売渡請求を承認したときは,取得日の20日前までに,売渡株主等(売渡株主及び売渡新株予約権者)に対し,株式等売渡請求を承認した旨,特別支配株主の氏名又は名所及び住所,株式等売渡請求の条件等を通知しなければなりません(法179条の4第1項第1号)。
     また,売渡株式の登録株式質権者及び売渡新株予約権の登録新株予約権者に対しても,株式等売渡請求の承認をした旨を通知する必要があります(同項第2号)。
     これらの通知のうち,売渡株主に対するもの以外については,公告をもって代えることができるとされています(同条第2項)。

    ④ 事前開示手続
     対象会社は,売渡株主等に対する通知又はこれに代わる公告のいずれか早い日から取得日後6か月(対象会社が公開会社ではない場合,取得日後1年)を経過するまでの間,特別支配株主の氏名等や株式等売渡請求の条件等を記載した書面等をその本店に備え置き,売渡株主等による閲覧等に供しなければなりません(法179条の5)

    ⑤ 特別支配株主による売渡株式等の取得
     株式等売渡請求をした特別支配株主は,取得日に,売渡株式等の全部を取得します(法179条の9第1項)。
     なお,特別支配株主が取得した株式が譲渡制限株式の場合であっても,譲渡承認があったものとみなされるため,実際に譲渡承認を得る必要はありません(同法第2項)。

    ⑥ 事後開示手続
     対象会社は,取得日後遅滞なく,株式と売渡請求により特別支配株主が取得した売渡株式等の数その他の株式等売渡請求による売渡株式等の取得に関する事項として法務省令で定める事項を記載した書面等を作成し,取得日から6か月間(対象会社が公開会社ではない場合,取得日から1年間),当該書面等をその本店に備え置くととともに,取得日に売渡株主等であったものによる閲覧等に供しなければなりません(法179条の10,会社法施行規則33条の8)。

    ? 撤回
     特別支配株主は,株式等売渡請求について対象会社の承認を受けた後は,取得日の前日までに対象会社の承諾を得た場合に限って,売渡株式等の全部について,株式等売渡請求の全部を撤回できます(法179条の6第1項)。
     対象会社が撤回の承諾をしたときは,遅滞なく,売渡株主等に対し,当該撤回を承諾した旨を通知又は公告しなければなりません(同条第4項,第5項)。対象会社がこの通知又は公告をした時点で,株式等売渡請求は,売渡株式等の全部について撤回したものとみなされます(同条第6項)。

    ? 備考
     対象会社が株券発行会社である場合は,株式等売渡請求の承認に際して,株券の提出に関する通知及び公告を行う必要があります(法219条第1項第4号の2)。
     また,対象会社が上場会社の場合,社債株式振替法,金融商品取引法,有価証券上場規程等にも配慮する必要があります。
       
    4 売渡株主等による対抗措置

    (1) 売渡株式等の取得をやめることの請求(法179条の7)
     売渡株主は,株式売渡請求が法令に違反する場合(同条第1項第1号),対象会社が売渡株主に対する通知若しくは事前開示手続を行う義務に違反した場合(同項第2号),売渡株式等の売買価格等が著しく不当である場合(同項第3号),売渡株式等の全部の取得をやめることの請求ができます。
     また,株式売渡請求に併せて新株予約権売渡請求がされており,新株予約権売渡請求が法令に違反する場合などの差止請求の要件が認められる場合には,売渡新株予約権者にも,売渡株式等の全部の取得をやめることの請求が認められます(同条第2項)。
     もっとも,売渡株主等が取得日の20日前に通知を受けるとして,準備期間及び審理期間が20日間しかないことからすれば,訴訟で差止の判決を取得することは時間的に困難です。株式等売渡請求の差し止めを求めるのであれば,早急に仮処分の申し立てを行う必要があるといえます。

    ? 売買価格の決定の申立て(法179条の8)
     また,売渡株式の売買価格に不服がある売渡株主等は,取得日の20日前の日から取得日の前日までの間に,裁判所に対し,その有する売渡株式等の売買価格の決定の申立てをすることができます。

    ? 売渡株式等の取得の無効の訴え(法846条の2)
     株式等売渡請求に係る売渡株式等の全部取得の無効は,訴えによってのみ主張することができることとされています(同条第1項)。提訴期間は,取得日から6か月間(対象会社が公開会社でない場合には,1年間)です。
     提訴権者は,取得日において売渡株主又は売渡新株予約権者であった者(同条第2項第1号),取得日において対象会社の取締役,監査役または執行役であった者並びに対象会社の取締役若しくは清算人(同項第2号)であり,被告は,特別支配株主です(法846条の3)。
     無効事由については,明示的な規定は設けられておらず,解釈に委ねられています。無効事由の具体例としては,①取得者の持株要件(法179条1項)の不足,②対価である金銭の違法な割当て(法179条の2第3項),③対象会社の取締役会・種類株主総会の決議の瑕疵(法179条の3第3項,法322条第1項第1号の2),④売渡株主等に対する通知・公告・事前開示書類の瑕疵・不実記載(法179条の4,179条の5),⑤取得の差止仮処分命令への違反(法179条の7)等であるとされ,⑥対価である金銭の交付の不履行が著しい場合,⑦対価金銭の額の著しい不当又は「締出し目的の不当」も無効原因となり得るとされています(江頭憲治郎著『株式会社法』282頁(有斐閣,第6版,2015年))。

    ? 役員への責任追及
     さらに,対象会社の取締役が株式等売渡請求の承認に際し,善管注意義務に違反して承認をした場合(例:売渡株主等の利益の配慮を怠り,売渡株式等の売買価格が相当でないにもかかわらず承認をした場合など)には,売渡株主等は,取締役に対し,第三者に対する損害賠償責任を追及することも考えられます。

    弁護士 西川 文彬

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  • 2015/12/18 商取引 集合動産譲渡担保契約について(田島・寺西・遠藤法律事務所)

    集合動産譲渡担保契約について

    Q. A社と取引を行う予定なのですが,取引によって生じる債権の額からして,無担保とするのは不安です。A社の所有する不動産には既に担保権が設定されており,また,保証人を付けることも難しそうである一方,A社の倉庫にはA社の仕掛品や在庫商品が保管されているので,これらの物品を担保に取ろうかと考えています。・・・・

    Q.
     A社と取引を行う予定なのですが,取引によって生じる債権の額からして,無担保とするのは不安です。
     A社の所有する不動産には既に担保権が設定されており,また,保証人を付けることも難しそうである一方,A社の倉庫にはA社の仕掛品や在庫商品が保管されているので,これらの物品を担保に取ろうかと考えています。
     すなわち,A社の倉庫内の複数の動産に譲渡担保権を設定しようと思うのですが,その場合における注意点などを教えてください。

    A. 
     集合動産譲渡担保権の設定においては, 

     ① 譲渡担保権の目的となる動産について他の担保権が設定されていないかなど権利関係を確認すること 
     ② 目的動産をきちんと特定すること
     ③ 譲渡担保権の対抗要件を具備すること

    等に留意する必要があります。 

     また,集合動産譲渡担保権設定契約書において,目的動産が集合動産譲渡担保の目的であることを明示すべきこと,目的動産について損害保険に付すること,目的動産の数量や管理状況を把握できるようにしておくこと,債務不履行時に目的動産の現実の引渡しが受けられるようにしておくことなどを定めておくことが肝要です。 
     以下,解説します。

    ●集合動産譲渡担保について 
     
     債権を保全するために,取引の相手方が倉庫等で保有している仕掛品や在庫商品といった複数の動産の集合物をまとめて譲渡担保権の目的にすることが認められており,そのような担保は「集合動産譲渡担保」と呼ばれています。 
     この集合動産譲渡担保が設定されると,譲渡担保権設定者(本件でいうA社)は,担保権実行までは「通常の営業の範囲内」であれば,担保の目的となっている集合動産のうちの個々の動産を自由に処分することができますが,個々の動産を処分した場合にはそれに見合うだけの動産を補充しなければなりません。そして,補充された個々の動産は,集合物に加わった時点で譲渡担保の対象となります。また,通常の営業の範囲を超えるような処分や担保権の設定は認められません。

    ●目的動産の権利関係の確認 

     集合動産譲渡担保を設定するに先立って,まず目的となる集合動産の権利関係を確認することが不可欠です。 
     動産は,質権や譲渡担保権,所有権留保,留置権,先取特権などの担保権が競合していることがあり,競合する権利の内容や対抗要件具備の先後によって,せっかく設定した集合動産譲渡担保が他の権利に劣後してしまい,結果として債権の回収可能性が低くなる事態に陥るリスクがあります。それゆえ,集合動産譲渡担保の目的たる集合動産について,自己に優先する第三者の権利が存在しないか,慎重に調査する必要があります。 

     なお,集合動産譲渡担保契約書において,これから設定しようとする譲渡担保権を阻害し得る事由や第三者の権利が存在しないことの表明保証に関する条項を置くことも望ましいでしょう。

    ●目的動産の特定 

     集合動産譲渡担保を設定するためには,担保の目的動産を特定することが要件として求められ,譲渡担保権設定者の一般財産から区別するに足りる程度に特定される必要があります。 
     この点,判例は,「構成部分の変動する集合動産であっても,その種類,所在場所及び量的範囲を指定するなどの方法によって目的物の範囲が特定される場合には,一個の集合物として譲渡担保の目的とすることができる」としています(最判S62.11.10)。

    ●集合動産譲渡担保の対抗要件 

     動産譲渡担保の対抗要件は「引渡し」であるところ,集合動産譲渡担保は,担保権設定後も担保の目的動産を担保権設定者が利用できることにメリットがあることから,ここでいう「引渡し」は,目的物の占有者がそれを手元に置いたまま占有を他者に移す「占有改定(民法183条)」の方法によって行われることになります。 

     なお,譲渡担保設定者(本件でいうA社)が法人である場合には,「動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律(以下,「特例法」といいます。」に基づく動産譲渡登記を行うことにより,民法178条の「引渡し」に代わる対抗要件を具備することもできます(特例法3条1項)。 
     この特例法に基づく登記と民法178条の引渡しが競合した場合,登記の時期と引渡しの時期の先後によって譲渡担保権の優劣が決せられるところ,対抗要件具備の時の証明が容易となることが特例法の登記制度を利用するメリットと言えます。

    ●その他

    ・明認方法 
     譲渡担保の目的となっている集合動産について,その保管場所において,当該集合動産が譲渡担保の目的となっていることを明示するよう譲渡担保権設定者(本件でいうA社)に義務付けておくことにより,第三者による譲渡担保権の競合などを防止することができ,後の紛争予防効果を期待することができます。

    ・損害保険 
     譲渡担保の目的となっている集合動産について,損害保険を付するものとし,保険事故が発生し,譲渡担保権設定者が保険金を受領した場合には,受領した保険金を被担保債権の弁済に充当する旨を定めておくことにより,万一,集合動産が滅失したとしても保険金から債権回収を図ることが望めます。

    ・目的動産の数量,管理状況の報告 
     譲渡担保権者は自己の手元に集合動産を置くわけではないため,譲渡担保の目的たる集合動産の価値や状況等を把握するため,譲渡担保権設定者に目的動産の数量や管理状況の報告を義務付けておくことが肝要です。

    ・不履行時の目的動産の現実の引渡し  
     被担保債権が履行されない場合に譲渡担保権の実行に速やかに移行できるようにするため,債務不履行があった場合には,譲渡担保権者が目的動産について現実の引渡しを受け,直接占有を得られるよう定めておくことが望ましいでしょう。

    田島・寺西・遠藤法律事務所


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  • 2015/11/06 商取引 事業投資有限責任組合における無権代理行為の追認(田島・寺西・遠藤法律事務所)

    事業投資有限責任組合における無権代理行為の追認

    Q 当社はとある投資事業有限責任組合の有限責任組合員ですが,無限責任組合員が組合契約で定めた事業範囲を逸脱して業務執行を行ったことを知りました。もっとも,当該行為は上記組合にとって利益となる行為だったので有効としたいのですが,何か方法はありますか。


    A 投資事業有限責任組合法第3条1項に掲げる事業の範囲内である場合に限り,有限責任組合員全員で「追認」をすることができます。

    1 投資事業有限責任組合について

     投資事業有限責任組合(Limited Partnership 以下,「LPS」といいます)とは,投資事業有限責任組合契約(各当事者が出資を行い,共同で一定の事業の全部又は一部を営む契約)によって成立する無限責任組合員及び有限責任組合員からなる組合を指します(投資事業有限責任組合契約に関する法律2条及び3条 以下「LPS法」といいます)。

     LPSは,民法上の組合(民法667条1項)を基本としながらも,管理者たる無限責任組合員以外の組合員の責任を有限とすることを法的に認める仕組みが採用されており,民法上の組合に比べて投資家が出資に踏み切り易いようになっています。

     もっともその反面,LPSでは,組合員(無限責任組合員であると有限責任組合員であると問わない)の出資を「金銭その他の財産」に限定しています(LPS法6条2項)。民法上の組合と異なり,労務出資が認められていないのです。その理由は,出資を具体的に債務の引き当てになりうるものに限定して,組合と取引関係に入る第三者の保護の観点から,組合の責任財産の充実をはかることにあります。

     LPSでは,投資対象が制限されており,具体的にはLPS法3条1項に列挙されているものに限られます(1号から7号までは投資等資金の供給に関する事業,8号はコンサルティング事業,9号は他の投資組合向けの出資,10号は1号から9号までの事業に付随する事業,11号は外国法人への投資,12号は余裕金の運用)。これらの事業の全部又は一部を営むことを約することで(またそれを含めた絶対的記載事項等を組合契約書に記載することで),LPS法上の契約ということができることになります。

     LPSは無限責任組合員及び有限責任組合員からなることが必要とされているため,無限責任組合員又は有限責任組合員の全員の脱退が,組合の解散事由として定められています(LPS法13条2号)。

    2 無限責任組合員による業務執行

     LPSにおいては,業務執行は無限責任組合員がこれに当たることになります。民法上の組合同様,無限責任組合員は自己の名(○○投資事業有限責任組合 無限責任組合員 甲)で組合のために法律行為をすることができます。LPSは法人格を有しないため,無限責任組合員は,法人の機関としてではなく組合員全員の代理人的地位において業務を執行することとなるのです。なお,民法の委任の規定が準用されており,無限責任組合員は組合の業務を行う上で善管注意義務を負うことになります(LPS法16条)。

     無限責任組合員が複数存在する場合は,組合の業務の執行はその過半数をもって決します。LPS法上,業務執行組合員を定めるための規定は存在せず,LPS法17条において義務付けられている,組合契約の効力の発生の登記事項に業務執行権者が含まれておらず,さらには上記した組合契約書における絶対的記載事項にも業務執行権者が含まれていないことから,無限責任組合員は例外なく全員業務執行に携わらなくてはならず,LPS法7条1項の解釈として組合契約によって一切の業務執行権のない無限責任組合員を定めることはできません。

    3 無権代理行為の追認の可否

     本件においては,無限責任組合員の業務執行としての行為が組合契約において設けた組合の事業の範囲を逸脱しており,当該行為は法的には無権代理行為ということになります。民法上は無権代理行為は本人の追認があれば有効な代理行為とすることができますが(民法第 113 条第 1 項),本件の場合においても追認が可能であるか,LPS法7条4項との関係で問題となります。

     同項は,「無限責任組合員が第3条第1項に掲げる事業以外の行為を行った場合は,組合員は,これを追認することができない」と規定するところ,LPS法においては,LPS法の目的及び組合の事業範囲を法律上定めた趣旨に鑑み,法律上で定められた事業の範囲を逸脱した法律行為については追認を認めず,組合との関係では確定的に無効な行為(無限責任組合員による無権代理行為)とするものです(逐条解説48頁)。

     もっとも,第 3 条第 1 項各号に規定する範囲よりもさらに事業範囲を限定した場合も,契約で定めた事業範囲を超えた行為は全て無権代理行為となりますが,当該行為が法律上の事業範囲を逸脱したものでなければ,追認によりその効果を有効に組合に帰属させることができます。

     以上の通りであるので,無限責任組合員による行為が組合契約で定めた事業の範囲を逸脱しているとして,それが3条1項各号に規定する範囲内か否かによって,追認の可否が異なることになります。

     なお,3条1項各号の範囲外の行為であった場合,追認は認められないことになりますが,当該行為の相手方は,当該行為を行った無限責任組合員に対し,民法第 117条にしたがって無権代理についての責任追及をすることが可能です。


    田島・寺西・遠藤法律事務所


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