コラム「企業法務相談室」一覧

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  • 2018/08/10 個人 更新拒絶と立退料(竹村鮎子弁護士)

    更新拒絶と立退

    Q 弊社は賃貸用テナントビルを複数所有しておりますが、この度、1棟のテナントビルについて、老朽化を原因に、取り壊しを行い、建て替えることを検討しています。幸いなことに、ほとんどのテナントは理解を示し、建物を明渡してくれましたが、1階でブティックを経営しているテナントだけが明渡しをしてくれません。次回の更新時には更新を拒絶すれば,建物を明渡してもらえるでしょうか?

    1 賃貸借契約の更新拒絶について
     賃貸借契約の更新を拒絶するには,「建物の賃貸人及び賃借人が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。」と法律で定められています(借地借家法第28条)。

     賃貸借契約の目的となっている不動産は,借主の生活や営業の拠点となっていることがほとんどです。例えば居住用の建物であれば,借主は,賃貸借契約期間が2年だとしても,小学生の子どもが学校を卒業するまでは,転居をしないで同じ建物に住み続けたいと思うでしょう。それにもかかわらず,突然賃貸借契約が終了しては,借主の生活設計を覆すことになってしまいます。
    事業用の建物である場合も同様に,事務所や店舗の移転を2年ごとに行うというのは現実的ではなく,借主はできるだけ継続した期間,建物を利用したいと思うでしょう。

     このため,賃貸借契約においては,契約期間が満了しても,その更新を拒絶するには,建物の賃貸人,賃借人双方の事情から判断して,賃貸借契約を終了させる正当な理由(これを「正当事由」といいます。)があると判断されるときに限り,賃貸借契約の更新拒絶が認められるのです。

    2 正当事由とは?
     それでは,相談者が賃貸借契約の更新を拒絶する正当事由があるか否かについて考えてみましょう。
     設例の場合,相談者には以下のような事情があります。
     ・建物が老朽化している
     ・テナントビルを取り壊して新しく立て替えたい
     ・他のテナントは明渡しに応じている
     これらの事情をもって,「正当事由がある」として更新拒絶が認められるでしょうか。ひとつひとつ考えてみましょう。
     
    ・建物の老朽化
     過去の裁判例などからすると,例えば建物の老朽を理由に更新拒絶が認められる場合とは,例えば建物の外壁にひびが入っているというような程度では足りず,「何かあればすぐにでも朽ち果てそう」な程度のものである必要があると考えられています。
    ・ビルの解体及び再建築
     現在の建物の状態でも通常の使用に問題がないのであれば,更新拒絶が認められる「正当事由」にはならないでしょう。
    ・他のテナントの状況
     空いている部屋に新たに募集をかければいいだけですから,それだけで更新拒絶が認められる「正当事由」にはなりにくいです。
     
     他方で,借主はビルの1階でブティックを経営しています。そうすると,借主側の事情としては,以下の点が考えられます。
     ・引っ越し代や移転先に支払う敷金,挨拶状の発送などの移転費用がかかる
     ・契約期間満了までに同じような条件の建物が見つからない可能性がある
     ・仮に移転先が見つかったとしても,移転準備の間,営業ができないおそれがある
     ・立地条件が変わることにより,固定客が離れてしまうおそれがある 

     単純に両者の事情を比較衡量すると,建物の明渡しを求めたい貸主の事情は,ある程度の理由はあるものの,「どうしても明渡してもらいたい」というまでの差し迫った事情ではないといえるでしょう。
    他方で借主の事情は,「建物を明渡して,ブティックを移転すると,店の経営状態が悪化するおそれがある」というものであり,借主にとっては死活問題であるといえます。
     したがって,建物をこのまま使いたい借主の事情の方が大きいものと考えられるため,貸主である相談者が,現状のままで賃貸借契約の更新拒絶を行うのはかなり難しいものといえるでしょう。
     
    3 立退料について
     しかし,相談者としても,「具体的に新しいビルの建築計画が進んでいるし,新しいビルを建てることで,人の流れを作ることができ,地域に貢献できる。
     また,近くには同水準の空きテナントもあるので,そこを1階の借主には紹介できる。他のテナントは退去してしまったので,早く再開発に着手しないと,賃料収入がなくなって経営難になる。他のテナントを募集するにも,1階の借主の動き次第では,またすぐに明渡してもらうことになるため,動きが取れない」という,借主に明け渡しをしてもらいたい事情もあることは事実です。
     
     そこで,重要になってくるのが,法律のいう「財産上の給付」すなわち立退料です。貸主が借主に対して,立退料を支払うことによって,借主に傾いている天秤を,自分の方に傾けることができるのです。

     それでは,立退料として,貸主は借主に対していくら支払えば,賃貸借契約の更新を拒絶できるのでしょうか。
     立退料を決める要素としては,①移転費用,②営業補償,③借家権価格などが挙げられています。以下,順を追ってご説明します。

    ①移転費用
     移転費用の内訳としては,おおむね以下のものが挙げられます。
    ・引っ越し代金
    ・移転先物件の仲介手数料
    ・移転先の差額家賃
    ・挨拶状の発送費用
     差額家賃については,何年分負担しなくてはならないのかという問題があります。これについては,公共用地の収用の際の差額家賃の考え方の基準が参考になるとの見解もありますが,明確な基準があるわけではありません。
     また,借主が見つけてきた転居先が,必要以上に賃料の高い物件であった場合などは,実際にその物件でなければ営業ができないのか,他にもっと賃料の安い物件がないのかなど,様々な要素を踏まえて判断しなくてはなりません。

    ②営業補償
     例えば移転によって借主が経営する店の売り上げの減少が見込まれる場合には,貸主はこれを一定期間,補償する必要があります。ブティックの移転によって,借主の売上に何らかの影響が出ることは避けられませんが,具体的にどのような影響が出るか,正確に判断するのは難しいでしょう。

    ③借家権価格
     借家権価格については,借家権が財産上の権利として認められているとはいえ,一般的に取引されているものではないため,価格を算定するのが難しいという問題があります。

     以上のとおり,立退料の算定における判断基準としては複数のものがありますが,結局のところ,明確な相場は存在しないというのが実際のところです。実際に裁判を起こしてみて,想定よりも多額の立退料が必要だとされるケースも珍しくありません。
     また,立退料はあくまで,貸主からの更新拒絶が認められる正当事由を補完するものとしての位置づけであると考えられています。したがって,貸主側の明渡しの必要性が高い場合には低額に,明渡しの必要性が低い場合には高額になると考えられています。
     また,立退料は正当事由を補完するものですので,建物の老朽化や他のテナントの退去などの事情が何もなく,単に貸主が「借主がとにかく生理的に嫌だから出て行ってほしい」などの,いわばワガママで明渡しを求める場合などには,いくら高額な立退料を用意しても,更新拒絶は認められないでしょう。

    4 交渉から明渡しまで
     それでは,相談者が明渡しを求めることを決めた場合,どのような手続きを踏めばよいでしょうか。以下,順を追ってご説明いたします。

    ①更新拒絶の通知を行う
     建物の賃貸借契約の更新を拒絶する場合,期間満了の1年前から6か月前までの間に,更新をしない旨の通知を行わなくてはなりません(借地借家法26条1項)。これを行わない場合,更新拒絶はそもそもできなくなるので,スケジュール管理は厳密に行ってください。
     口頭の通知でも有効ではありますが,口頭の場合,更新拒絶の通知をしたことを証明できず,トラブルになった際に不利となります。したがって,更新拒絶の通知は,後の証拠とするためにも,必ず内容証明郵便で行っておくべきです。
     なお,内容証明郵便は,更新拒絶の通知をしたことの明確な証拠となる反面,1行20字以内,1枚26行以内,①,②など,〇で囲んだ文字は2文字とカウントされるなど,書き方に厳密な規定がありますので,発送の際には注意が必要です。また,内容のボリュームにもよりますが,1通あたり2000円程度の費用がかかります。

    ②借主と交渉を行う
     内容証明郵便が届いたら,たいていの場合,借主から何らかの連絡があるでしょう。そうしたら,借主と更新拒絶について交渉を行います。借主とは,主に以下の点について交渉を行いましょう。
     ・賃貸借契約について更新を行わないことの確認
     ・建物を明け渡す期限
     ・立退料を支払う場合には金額と支払日,支払い方法など

     交渉を行わずに,法的手続きを取ることも可能ではあります。しかし,裁判などの法的手続きは,一般的に解決まで半年から1年程度の時間がかかることが多いのに対して,交渉は比較的短時間で進めることが可能です。
     また,例えば立退料を分割払いにしたり,明渡しの期限を賃貸借契約期間満了時よりも遅くにすることができたり,明渡しまでの賃料を免除する代わりに立退料を安くすることができたり,柔軟な解決を図ることもできます。

     借主の立場で考えてみても,これまで何らの落ち度もなく建物を借り,ブティックを経営していたのが,突然,立退きを要求されるのですから,当然,貸主への反発心や不信感もでてきます。それにもかかわらず,いきなり裁判を行っても,貸主への反感を深めるだけですので,まずは誠実に交渉を行ってみるべきでしょう。

    ③簡易裁判所に調停を申し立てる
     借主との交渉が決裂してしまった場合,それでも明渡しを求めるには,法的手続きを取る必要があります。

     賃貸借契約において,賃料の増減額を請求する場合には,まずは調停を行わなくては裁判を起こすことはできません(これを「調停前置主義(ちょうていぜんちしゅぎ)」といいます)。調停とは,裁判所で行う手続きであり,一般市民から選ばれた調停委員(弁護士や不動産業界経験者などの有識者であることが多いです)と裁判官が当事者の間に立って,話し合いでトラブルの解決にあたる手続きです。賃貸借契約のような継続的な法律関係は,貸主と借主の信頼関係が重要であり,将来にわたって両者の円満な関係を維持するには,裁判よりもまずは調停,すなわち話し合いよって解決されることが望ましいと考えられているため,調停前置主義が採用されています。

     賃貸借契約の更新拒絶については,調停前置は求められておらず,調停を経ずに訴訟を提起することも可能ですが,賃貸借契約が終了しておらず,未だ建物を貸している関係は続いている以上,借主との信頼関係を維持することは重要であるといえます。したがって,まずは調停を申し立ててみるのが良いでしょう。
     民事調停は,借主の住所地を管轄する簡易裁判所に対して申し立てるのが原則です。
     なお,賃貸借契約書に「本件に関する一切の紛争は,○○地方裁判所を第1審の管轄裁判所とすることを合意する」というような条項(これを,「合意管轄条項」といいます。)がある場合があります。この条項を根拠に,相手方の住所地を管轄する簡易裁判所ではなく,○○地方裁判所に調停を申し立てることができるでしょうか。
     この点,上記のような文言の合意管轄条項は,あくまで訴訟についてのものであり,調停には適用されないと考えられています。他方で,契約書の記載が,「本件に関する一切の紛争(調停手続きも含む)は,○○地方裁判所を管轄裁判所とすることを合意する」というような記載であった場合には,○○地方裁判所に調停を申し立てることができます。調停を申し立てる前に,契約書の記載を確認してみましょう。
     とはいえ,すでに借主と交渉を行ったにもかかわらず,再度,調停を起こす必要があるのでしょうか。この点,調停は,当事者だけで話し合いを行っていた交渉とは異なり,調停委員が間に立って,時には借主を説得してくれることもありますので,交渉よりもスムーズに話し合いが進むことが期待できます。このため,交渉が決裂しても,調停を行うことの意義はあると言えるでしょう。
     
     調停はおおよそ1回の期日につき2時間程度,1か月に1回程度のペースで進められます。また,調停期日は,会議室のような部屋に,貸主,借主が交互に呼ばれ,自らの言い分を調停委員に話すという方法で進められることが一般的です。貸主・借主が直接顔を合わせることは調停成立時を除けば,めったにありません。
     調停は,弁護士を代理人とした場合には,貸主本人が出席する必要はありません。とはいえ,弁護士に依頼をした場合でも,本人が出席できないということではありません。また,調停の「話し合い」という性質からすると,本人が出席して,自らの口から事情を説明したほうが,調停委員からの理解も得やすい場合もあるので,状況に応じて出席も検討するべきでしょう。
     
     調停が成立した場合,調停調書が作成されます。調停調書は公の文書であり,もし,借主が調停で定められた期限までに建物を明け渡さない場合,強制的に明渡しを求めることができます。この点も,調停を行うメリットであるといえます。
     しかし逆に言えば,貸主も,借主が建物の明渡しをしているにもかかわらず,決められた期限までに立退料を支払わないような場合には,預金や不動産などの財産を差し押さえられてしまう可能性もあります。したがって,立退料の資金の用意には注意が必要です。なお,このことは後に述べる裁判手続きにおいて,判決などが出された場合や和解が成立した場合でも同様です。

    ④ 裁判を提起する
     交渉や話し合いが決裂しても,なおも建物の明渡しを求めるには,裁判を起こす必要があります。裁判は,裁判所が証拠に基づいて,最終的には判決によって,紛争の解決を図る手続です。

     相談者の場合,自身の主張を裏付ける証拠として,主に以下の証拠を提出する必要があるといえるでしょう。
    ・建物の老朽化を示す証拠→建物の写真
    ・再開発の計画があることを示す証拠→新しい建物の設計図
    ・他のテナントが退去したことを示す証拠→他のテナントとの間の賃貸借 契約書
    ・近隣に同水準の空き物件があることの証拠→近隣の賃貸不動産情報
    ・自身が主張する立退料の金額を裏付ける証拠→私的鑑定書

     立退料についても,貸主・借主双方から提出される証拠や,裁判所が選任する不動産鑑定士による鑑定を経て,裁判所が決定します。このため,場合によっては,貸主の想定を大きく超える立退料が算定される可能性もあります。また,仮に立退料の算定にあたり,裁判所が選任する不動産鑑定士による鑑定が行われた場合,別途,両当事者で鑑定費用を負担する必要があります。鑑定費用は建物の規模によって異なりますが,50万円から100万円程度かかることもあります。
     なお,裁判手続きにおいても,裁判所の判断で,話し合いによる和解がなされることもあります。 

    5 専門家の関与について
     借主との交渉や調停,裁判手続きは高度な法律知識を必要とします。また,借主が任意に立退きに応じない場合には,解決まで1年以上の長期間を要することも多くありますので,貸主の物理的及び精神的負担は大きいものとなります。
     負担を少なく,また,明渡しを確実なものとするためには,専門家である弁護士に協力を求めることが賢い選択であると思います。
     
     「次の契約更新のときに出て行ってもらおう」という軽い気持ちでは,建物を明け渡してもらうことは,まずできません。立ち退き料を支払ってでも建物の明渡しを実現して計画を実現するか,これまでどおり借主との契約を続けるか,どちらの方がメリットが大きいか,慎重な判断が必要だといえます。
     また,仮に借主に出て行ってもらうことを選択したとしても,交渉開始から明渡しの実現までには長い時間を必要とします。貸主としては,その間の賃料収入を確保するため,すでに退去が完了した部分について,定期建物賃貸借契約で新たに募集をかけるなどの対応を検討する価値があるかもしれません。
     
    弁護士 竹村 鮎子


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  • 2014/03/24 個人 『3.11 東日本大震災から3年が経過して』(進藤亮弁護士)

    3.11 東日本大震災から3年が経過して

    1 はじめに

    私は,東日本大震災の約1年前から震災の2年後までの約3年間,仙台に住んでいたこともあり,1年前に東京に移転してきてからも被災地とのつながりを持ち続けるべく,被災地の復興支援活動を行っている団体に(自分の可能な範囲内で)参加しています。

    これまでも被災地の復興支援活動の一環として,陸前高田や石巻,女川などを訪れてきましたが,今回は,平成26年3月9日,10日で,岩手県山田町と釜石市を訪問してきました。

    その時のことを簡単にご報告しようと思います。

    2 被災地の状況

    山田町と釜石市は三陸海岸に位置しており,東日本大震災の際,津波による甚大な被害を受けた地域です。

    東京から行くと,新花巻駅まで新幹線で約3時間(やまびこ利用),新花巻駅からチャーターバスで2時間弱ほどかかります。

    3月でも寒さは厳しく,震災当日は雪が降りましたが,私が訪問した際にも同じように雪が降り,当時の寒さを追体験することとなりました。

    震災から3年が経過して,街の中のがれきはほとんど撤去されており,津波により建物が流された地域は,更地となり住宅の基礎などが残っているだけの状態となっていました。

    一方,海から少し離れた地域では,山を切り崩し,谷を埋めたり低い土地を嵩上げしたりして,津波被害に遭った方々の移転先とするための用地等の整備工事が行われていました。

    3 生じている問題

    現在津波の被害にあった地域では,高台移転のための用地や海沿いに堤防を建設するための用地を取得するにあたって,様々な問題が生じています。

    被災地訪問中,役場の担当者の方からお話を伺ったところによると,たとえば,対象となっている土地の登記が昔のままとなっており,何代にもわたって相続された結果,一筆の土地の所有者が数十名,数百名となっているケースがあり,用地取得のための交渉を始めようにも権利者を特定することすら困難であるという問題や,堤防を建設するために取得すべき土地は何筆もあるため,一筆の土地の地権者が1名であっても,結局,短期間に多数の地権者と交渉を行わなければならないという問題,用地取得には上記のような大きな障害があることから多数の人員を要するにもかかわらず,役所職員の人数は限られており,絶対的にマンパワーが不足しているという問題などがあるとのことです。

    今般,これらの問題について,被災地のみならず東京の弁護士の間においても,対策を講じるべく,用地取得の迅速化を図る特例措置の必要性について議論されており,土地収用を既存の制度より簡易な手続きで実現できるようにしてはどうか,といった提案がされています(具体的には,独立性の高い専門的第三者機関が損失補償金額を見積,事業者は,この金額を供託することにより,復興整備事業の工事に着工することができるようにするといった案が提案されています。)。

    用地取得は復興に向けた事業を進めるための土台作りの段階であり,それがより迅速に行われれば被災地の復興を早めることに繋がると言えます。

    もっとも,「被災地復興」という大義名分があるとはいえ,用地取得の対象となる土地の所有者にとっては,半ば強制的に不動産を奪われることになるわけですから,この者に対する十分な補償がなされなければ,財産権を侵害するものとして憲法問題に発展することもありうるでしょう。

    したがって,新制度を作るにあたっては,かかる観点から,不服申立ての機会の確保と損失補償に関するフォローは欠かすことはできません。

    また,今回の被災地訪問中に,国や県レベルの事業であれば格別,市町村レベルの事業においては,土地収用を簡易な手続きで行えるようになったとしても,市町村職員と住民は親戚を巻き込んだ一生の付き合いであるため,そもそも収用への抵抗感が強く,なるべく地権者からの個別の同意を得て用地取得をしようとするのではないか,と懸念する声を聞くこともありました。

    新制度を作ればそれで問題は全て解決するという,そう単純なものでもないことが分かりました。

    とはいえ,今回,山田町と釜石市を訪問して,未だに仮設住宅に住む方々や,役所の職員として町の再生・復興のために尽力されている方々のお話を伺い,また,震災から3年が経過したにもかかわらず遅々として進まない被災地の現状を目の当たりにして感じることは,やはり被災地の復興を後押しするための具体的方策が間違いなく必要であるということでした。

    4 最後に

    震災直後,数週間後,数か月後,1年後,3年後と,時間が経過するにつれて,被災地が抱える問題や被災者のニーズは変化していきます。

    数か月後にはおそらく先に述べたこととは違った,また新たな問題やニーズが生じていることでしょう。

    その新たな問題やニーズを拾い上げるためにも,今後も被災地に目を向け,足を運び,現地を見て,現地の人と話して,そして,被災地の復興が少しでも進むよう,微力ではあるものの支援の活動を継続していきたいと思います。

    最後に,このコラムを読んでいただいた方に,被災地に少しでも興味を持っていただき,また,被災地を応援していただければ幸いです。


    田島総合法律事務所
    弁護士 進藤 亮


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