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> 2023/08/23 労働問題
ハラスメント加害者に対するヒアリング方法について
Q.ハラスメント被害者からの内部通報があり、加害者のヒアリングを実施することになりました。ヒアリング時は、どのようなことに気を付ければいいでしょうか。
A.ヒアリングは、2名体制で行うことが望ましく、5W1H(いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どうした)を意識して、具体的に聴き取る必要があります。また、客観的な証拠を得ている場合には、その提示のタイミングにも配慮が必要です。その他、記録のため、ヒアリングを録音しておくことも重要です。
【説明】
1 ヒアリング(以下「聴取」と記載します。)時の留意点
(1)聴取担当者の人数
実効的な聴取及び適正性を担保の観点から、1名体制を避け、2名体制(聴き取り担当、メモ取り担当)が望ましいでしょう。
(2)冒頭に伝えておくべきこと
加害者に対し、正直に話さなければならないこと、ヒアリング内容について他の従業員に話してはいけないこと等を伝え、了承を得ておくことも重要です。
他方、加害者による通報者探しを避けるため、内部通報があったことは告げないようにしてください。
(3)事実の聴取方法
いきなり核心を突くクローズな質問(イエス、ノーで答えられる)は避け、周辺事実からオープンな質問をはじめて、徐々に聴取対象の事実関係について触れていくようにしてください。
聴き取りの際には、常に、5W1H(いつ、どこで、だれが、何を、なぜ、どうした)を意識して、回数や期間等も可能な限り具体的かつ正確に聴き取る必要があります。
また、加害者と議論することなく、淡々と事実を確認することを意識してください。もし、加害者の弁解と矛盾する客観的な証拠を取得できている場合には、加害者の弁解を一通り聞いた後、当該証拠を示すことが効果的です。
なお、聴取に際しては、通報者を特定させる情報を加害者に伝えないように、伝えてはいけない情報を整理しておくことも重要です。
(4)録音の要否等
最初に「記録のため録音させてもらいます。」と伝えて録音しておくことが望ましいでしょう。
なお、加害者が録音している場合があることにも留意が必要です。
2 聴取前の準備及び聴取後の記録
(1)聴取に先立つ準備
時系列等に沿った事案の正確な把握と先立って収集しておいた証拠を整理しておくとよいでしょう。
また、加害者の聴取に先立って、通報者(特に被害者と同一である場合)には、「加害者に通報をしたことが知られるリスクがあること」を説明し、当該リスクについて了承を得ること、必要に応じて、上司等の関係者からの聴取を先行することが重要になる場合があります。
(2)聴取結果の記録
加害者がハラスメント行為を認めるようであれば、聴取したハラスメント行為、動機、反省の意などを書面にまとめ、同書面に加害者から署名をもらって記録として保管しておくとよいでしょう。
3 最後に
加害者への聴取は、ハラスメント調査で重要な局面であり、聴取に臨むにあたっては、事案の把握や質問内容の検討など、入念な準備が必要となります。
実効的な聴取を実施するために、以上のようなことを意識していただくとよいでしょう。
以上
弁護士 西川 文彬
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