企業の法令・倫理違反行為によるダメージ
近時、企業の不祥事が内部者による外部への通報によって明るみに出るケースは枚挙に暇がありません。その違法性の程度によっては、監督官庁からの行政処分や企業のイメージダウン等によって、企業経営そのものに重大な支障を来たす例も頻発しています。
経営のグローバル化と株主や社員、消費者等のステークホルダーの意識変革は、企業経営の根本規範としてコンプライアンスの徹底を求めています。そこでは、企業は、法令はもとより、省庁ガイドラインや通達、民間の自主ガイドライン、そして企業倫理に至るまで、社会のルールを遵守しなければなりません。
企業倫理をも含めた広範な意味での法令遵守は、まず経営ラインによる適切な内部統制の中で実現すべきものですが、経営陣による法令・倫理違反行為をはじめとして、内部統制システムが機能不全に陥る不幸な事例も数多く見られます。このような行為が、社外に真っ先に通報されることで、最後までその隠蔽を図ろうとする経営陣の違法・不当性が顕著となるとき、企業経営に対するダメージは計り知れないものとなってしまいます。
自浄作用のための内部通報・ホットライン
そこで、このような法令・倫理違反行為に対しては、まず企業内部での自浄作用を機能させる必要があります。そのための重要な手段が、内部通報制度です。その呼び方は、内部通報、ホットライン、企業倫理ヘルプライン、公益通報窓口、目安箱等様々ですが、趣旨としては、企業の法令・倫理違反行為に対する内部関係者からの通報を企業内部で受け付け、自ら調査し適切な処分を行うことで、企業内部での是正の途を確保するためのものと言えます。
この点、平成18年4月に施行された公益通報者保護法は、一定の要件の下に公益通報者への解雇等の不利益行為を無効として通報者を保護するものですが、企業としては、内部通報をもって消極的に捉えるのではなく、むしろコンプライアンスの手段として積極的に活用する必要がある訳です。その際、内部通報に対する適切な取り扱いをする企業においては、外部の第三者への公益通報が認められにくくなり、不祥事についての社内対応をより可能にするというメリットもあります(同法3条3号イ、ロ参照)。
内部通報・ホットラインの運営に当たって
内部通報・ホットラインの運営に当たって、仮に通報受付・調査機関が、経営陣直轄の内部者のみによる組織である場合、経営側の不正に対しては十分なチェック機能を発揮できず、社会からの十分な信頼を得ることもできないことでしょう。内部統制システムにおいては独立的監査の視点に力点が置かれるように、内部通報制度の運用に当たっても、外部の弁護士等の有識者を交えた中立的色彩の強いコンプライアンス委員会の設置や、外部の専門的な通報窓口を活用することで、経営陣の不正をも対象とした自浄作用を担保しなくてはならない所以です。通報者の保護を厚くし、内部通報をしやすくすることが、コンプライアンスのよりよい実現に資することから、相談窓口は企業の内外に複数設けるべきであり、同時に、守秘義務に基づく徹底的な情報管理が必須といえます。
その際に、相談を受け付ける機関は、過去に行われた事後的な法令・倫理違反行為の通報ばかりでなく、これから行われる行為についての法令・倫理適合性の相談をも含めた対応をしなければなりません。そうでなければ、企業の法令・倫理違反行為を根本から撲滅することはできません。
田島・寺西・遠藤法律事務所の内部通報・コンプライアンス相談窓口サービス
そこで所長弁護士田島正広をはじめこの分野への取り組み経験の豊富な弁護士の揃う当事務所では、その有するノウハウを生かして、これらの要請に適合した以下のサービスを提供しております。
法的に守秘義務を負う弁護士、社会保険労務士らにより相談内容に応じた専門的な対応を実現すると共に、徹底的な守秘義務・情報管理義務の下、ハイレベルな情報管理の実現を図っています。
お知らせ
- 2021.10.13 田島正広弁護士による「改正公益通報者保護法に基づき事業者がとるべき措置に関する指針の公表と実務上の留意点」が掲載されております。
- 2021.08.25 書籍『Q&A リモート新時代の法律実務』が日本加除出版株式会社より出版されました。
- 2021.08.12 田島正広弁護士による「公益通報者保護法改正の概要とポイント(2020年(令和2年)改正法) 」が掲載されております。
- 2020.03.26 企業研究会主催「ビジネス契約締結交渉の実務」にて弁護士田島正広が講師を務めました。
- 2020.02.20 企業研究会主催「リスクマネジメントとしての内部通報・ホットライン制度運用に関する実践的Q&A」にて田島正広弁護士が講師を務めました。