コラム・企業法務相談室

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> 2025/08/19 商取引

サブスクリプションサービスを展開する場合の主な留意点

Q.この数年、サブスクリプションによりサービスを展開している企業をよく見かけますが、当社も、ペット用健康食品をサブスクリプションにより販売しています。特に、最初の1か月は無料サービスで、次月以降を有料とすること、将来的に有料サービスの値上げを行うこと、などを検討していますが、どのような点に留意すべきでしょうか。また、将来的に、サービスを終了させる場合や、返金対応を要する場合についても教えてください。


A.

初回無料サービスを実施する場合、その後に有料サービスへの自動更新を定める際には、ユーザーに対して不利な条件への変更となるため、事前に利用規約により同意をとることが必要です。

また、有料サービスに移行した後、料金を値上げすることを検討している場合にも、利用規約の変更をしたうえで、ユーザーからの同意を得ることが必要となります。

その他、サービスを終了させる場合にも、ユーザーを不当に害さないようサービス終了に関して予め利用期間にサービス終了に関して定め、ユーザーに事前に周知しておくべきです。

また、返金対応に関しても、特定商取引法の対象となる取引形態の場合には、クーリング・オフの対象となるため、自身の扱う商材がそのような場合に該当するか予め確認し、必要に応じて返金対応するべきです。


目次

1 はじめに

2 初回無料サービスを実施する場合の適用期間、自動更新、解約

3 有料サービスの料金の値上げ

4 サービスを終了させる場合(消費者契約法に関して)

5 返金、クーリング・オフを求められた場合(特定商取引法に関して)

6 最後に

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1 はじめに

近年、AmazonプライムやNetflixといった音楽や動画の配信サービスなど、サブスクリプション(定額課金)モデルは多くの業界で急速に広がっており、便利で安定的に収益を見込める一方で、法的には、ユーザーとの契約関係において、サービスの提供方法、利用料金の定めなど留意点があります。以下では、特にサブスクリプションの利用に関して、企業が検討する際に押さえておくべきポイントを解説します。


2 初回無料サービスを実施する場合の適用期間、自動更新、解約

ユーザーを多く獲得するために、初回無料、初月無料などのサービスを提供して、一定期間経過後に、有料のサービスにユーザーを誘導することは多くの企業が行っており、有効な手段と考えられますが、その場合、無料サービスの適用期間、自動更新、解約の料金などの問題が考えられます。


⑴ 無料サービスの適用期間

無料とする期間をどの程度にするかは特に規定はなく、無料サービスの提供は、ユーザーにとって、不利益を生じさせる措置ではないため、その適用期間の長さなどが法的に問題になるケースは基本的にないと考えられます。


⑵ 契約の自動更新

月末までに解約手続をしなければ、契約を自動更新する等の規定を定めることが、ユーザーにとっても手続が不要であり利便性がありますが、自動更新のタイミングで有料サービスに移行させる場合、ユーザーにとって不利な条件に変更することになり、トラブルが生じるおそれがあります。

契約の更新などによって料金が変わる場合には、事前に、利用規約等で契約の際にユーザーの合意を取ること、ホームページなどのユーザーが容易に確認できる場所に分かりやすいように契約更新、契約内容が切り替わるタイミングについて明確に記載すること、を要すると考えられます(民法第548条の4参照)。


⑶ 有料サービスに変更した後の解約

たとえば、月額サービスの場合、解約日までの日割りの料金を請求することなどを明確に利用規約等において定めておくべきです。特に、途中で解約しても当該月の利用料を全額請求したいとする場合には、解約後から当該月の終わりまでの間サービスの提供がされないにもかかわらず料金を徴収することになるため注意が必要であり、契約をする時点で、ユーザーからの同意を明確にとっておくべきです(民法第548条の2ないし第548条の4、消費者契約法第10条参照。なお、「通信販売の申込み段階における表示についてのガイドライン」についても参照。https://www.no-trouble.caa.go.jp/pdf/20230421la02_09.pdf)。


3 有料サービスの料金の値上げ

無料サービスから有料サービスへ移行した後、ユーザーに対して定額料金の値上げを行いたい場合、当該値上げはサービス内容の変更であり、利用規約の変更が必要になります。民法(第548条の4)では、実体的要件として、①契約の目的に反しないこと、②合理性、を定め、手続的要件として、変更の効力発生時期までに、①変更する旨、②変更後の内容、③効力発生日、を周知することを定めており、料金の値上げを行うためにはこれらの条件を満たす必要があります。


⑴ 実体的要件

ア ①契約の目的に反しないこと

サービスの本質的な内容の変更がなく、合理的な範囲で定額利用料の値上げをするといった場合には、サブスクリプションサービス契約の目的には反しないと考えられます。

イ ②変更した内容の合理性

変更した内容が合理的かは、㋐変更の必要性、㋑変更後の内容の相当性、㋒利用規約の変更をすることがある旨の定めの有無及びその内容、㋓その他の変更に係る事情を考慮要素として客観的な視点から判断されます。

㋐ 変更の必要性

料金を値上げするに至った必要性として、市場環境の変化、物価の高騰などにより、現在の料金ではサービスを維持できなくなったなどの理由が考慮されると考えられます。

㋑ 変更後の内容の相当性

変更の必要性の理由に照らして過剰すぎないかなど、具体的な値上げ額が妥当かを検討すべきです。

㋒ 利用規約の変更をすることがある旨の定めの有無及びその内容

具体的に変更の条件や手続が定めておくことで合理性があるとより認められやすくなると考えられます。

㋓ その他の変更に係る事情

ユーザーに対して過度な不利益を与えないようにすべきであり、値上げが将来的なものとして効力発生までの猶予期間を設けること、値上げが生じるまでに不利益なくユーザーが退会できるようにすること、などといった措置を取ることが考えられます。


⑵ 手続的要件

実体的要件に加え、手続的要件として、定額利用料の値上げの効力発生時期、その変更の効力発生時期までに、①変更する旨、②変更後の内容、③効力発生日、を周知する必要があります。

具体的な周知の方法としては、公式ホームページのトップページに分かりやすい形で上記①~③を掲載することが考えられます。この点、ユーザーがホームページを見ていないなどの場合に、しばらく経ってから自身が変更内容に合意していないと主張することも考えられますので、効力発生日直前に掲載するのではなく、効力発生までに余裕をもって掲載すべきと考えられます。また、クレームをできるだけ防ぐためにも、上記に加えて、ユーザーに対して個別に電子メールで上記①~③の内容を連絡するとより望ましいです。


4 サービスを終了させる場合(消費者契約法に関して)

サービス提供者は、一般的に、サービス利用契約に基づいてユーザーに対して当該サービスを利用させる義務を負っているため、サービス提供者が一方的にサービスを終了させた場合、債務不履行に基づく損害賠償請求を受ける可能性があります。そのため、提供者は、当該利用契約に、提供者側が一方的にサービスの全部又は一部を停止、中止、変更又は終了させることができる旨の条項を設けておくことが考えられます。

もっとも、その場合でも、サービスを突然終了させたことによってユーザーが被る不利益の程度が大きいなど、利用者にとって不利な免責条項は、消費者の利益を一方的に害する条項(消費契約法第10条)として、無効になる可能性があります。そのため、利用契約に、サービスを終了させる際には事前に通知する旨の規定を設けた上、時間的猶予を十分にもってサービスの終了を事前に周知するなどして、ユーザーが一方的な不利益を被らないようにすべきと考えられます。

その他、上記のような配慮を行った場合でも、一方的に契約を終了させる旨の条項が無効と判断される恐れはあり、その際に、当該条項が無効と判断されたとしても、その他の条項まで無効とならない旨を記載して、無効となった当該条項以外の条項や契約全体までもが無効とならないように対応しておくことが考えられます。


5 返金、クーリング・オフを求められた場合(特定商取引法に関して)

サブスクリプションサービスにおいて、ユーザーに返金やクーリング・オフを求められた場合、必ずしも求めに応じる義務はないですが、特定商取引法のクーリング・オフ制度や、契約上で返金やクーリング・オフの規定を設けている場合には、応じなければなりません。サブスクリプションサービスにおいては、特に、特定商取引法の対象となる取引形態として、特定継続的役務提供(たとえば、エステティックサロンや語学教室など)及び通信販売が挙げられます。

特定継続的役務提供においては(同法第41条)、たとえば、月額課金のサブスクリプションサービスの場合、解約禁止期間が1か月ないし2か月の期間を超え、かつ、金額が5万円を超える場合には、「特定継続的役務」としてクーリング・オフなど特商法の規制が適用されることになります。

また、通信販売(同法第2条第2項)に該当する場合においては、販売条件を広告する場合、販売価格等とともに返品特約に関する事項などの具体的な記載事項が義務付けられており、事業者は、返品を認めない場合にはその旨を明確に記載する必要があり、返品の可否に関する明確な表示がない場合には、消費者は、商品を受け取ってから8日間は返品が認められています(同法第15条の3)。

また、通信販売に該当する場合には、広告表示に関して、景品表示法、不正競争防止法上の規制などの他に、特定商取引法において、一定の事項を広告としてホームページ等に表示する義務(同法第11条)などの広告規制も存在しますので注意が必要です(なお、扱う商材によっては、上記の他に個別の法律による広告規制がありますので、商材ごとに適用される法律を確認すべきです。)。


6 最後に

サブスクリプションサービスは、今後もますます広まっていくものであり、ユーザーを広く獲得するために非常に有用な手法と考えられますが、特に、利用料金を中心とした契約関係については、事前にしっかりと検討しておく必要があります。皆様がサブスクリプションサービスを進めるに当たり、利用規約の作成、レビューなど法的な対応を要する場合には弊所までどうぞご連絡ください。

以上


田島・寺西・遠藤法律事務所 監修 弁護士田島正広


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