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2025/08/19
商取引
サブスクリプションサービスを展開する場合の主な留意点(田島・寺西・遠藤法律事務所 監修 弁護士田島正広)
サブスクリプションサービスを展開する場合の主な留意点
Q.この数年、サブスクリプションによりサービスを展開している企業をよく見かけますが、当社も、ペット用健康食品をサブスクリプションにより販売しています。特に、最初の1か月は無料サービスで、次月以降を有料とすること、将来的に有料サービスの値上げを行うこと、などを検討していますが、どのような点に留意すべきでしょうか。また、将来的に、サービスを終了させる場合や、返金対応を要する場合についても教えてください。
A.
初回無料サービスを実施する場合、その後に有料サービスへの自動更新を定める際には、ユーザーに対して不利な条件への変更となるため、事前に利用規約により同意をとることが必要です。
また、有料サービスに移行した後、料金を値上げすることを検討している場合にも、利用規約の変更をしたうえで、ユーザーからの同意を得ることが必要となります。
その他、サービスを終了させる場合にも、ユーザーを不当に害さないようサービス終了に関して予め利用期間にサービス終了に関して定め、ユーザーに事前に周知しておくべきです。
また、返金対応に関しても、特定商取引法の対象となる取引形態の場合には、クーリング・オフの対象となるため、自身の扱う商材がそのような場合に該当するか予め確認し、必要に応じて返金対応するべきです。
目次
2 初回無料サービスを実施する場合の適用期間、自動更新、解約
5 返金、クーリング・オフを求められた場合(特定商取引法に関して)
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1 はじめに
近年、AmazonプライムやNetflixといった音楽や動画の配信サービスなど、サブスクリプション(定額課金)モデルは多くの業界で急速に広がっており、便利で安定的に収益を見込める一方で、法的には、ユーザーとの契約関係において、サービスの提供方法、利用料金の定めなど留意点があります。以下では、特にサブスクリプションの利用に関して、企業が検討する際に押さえておくべきポイントを解説します。
2 初回無料サービスを実施する場合の適用期間、自動更新、解約
ユーザーを多く獲得するために、初回無料、初月無料などのサービスを提供して、一定期間経過後に、有料のサービスにユーザーを誘導することは多くの企業が行っており、有効な手段と考えられますが、その場合、無料サービスの適用期間、自動更新、解約の料金などの問題が考えられます。
⑴ 無料サービスの適用期間
無料とする期間をどの程度にするかは特に規定はなく、無料サービスの提供は、ユーザーにとって、不利益を生じさせる措置ではないため、その適用期間の長さなどが法的に問題になるケースは基本的にないと考えられます。
⑵ 契約の自動更新
月末までに解約手続をしなければ、契約を自動更新する等の規定を定めることが、ユーザーにとっても手続が不要であり利便性がありますが、自動更新のタイミングで有料サービスに移行させる場合、ユーザーにとって不利な条件に変更することになり、トラブルが生じるおそれがあります。
契約の更新などによって料金が変わる場合には、事前に、利用規約等で契約の際にユーザーの合意を取ること、ホームページなどのユーザーが容易に確認できる場所に分かりやすいように契約更新、契約内容が切り替わるタイミングについて明確に記載すること、を要すると考えられます(民法第548条の4参照)。
⑶ 有料サービスに変更した後の解約
たとえば、月額サービスの場合、解約日までの日割りの料金を請求することなどを明確に利用規約等において定めておくべきです。特に、途中で解約しても当該月の利用料を全額請求したいとする場合には、解約後から当該月の終わりまでの間サービスの提供がされないにもかかわらず料金を徴収することになるため注意が必要であり、契約をする時点で、ユーザーからの同意を明確にとっておくべきです(民法第548条の2ないし第548条の4、消費者契約法第10条参照。なお、「通信販売の申込み段階における表示についてのガイドライン」についても参照。https://www.no-trouble.caa.go.jp/pdf/20230421la02_09.pdf)。
3 有料サービスの料金の値上げ
無料サービスから有料サービスへ移行した後、ユーザーに対して定額料金の値上げを行いたい場合、当該値上げはサービス内容の変更であり、利用規約の変更が必要になります。民法(第548条の4)では、実体的要件として、①契約の目的に反しないこと、②合理性、を定め、手続的要件として、変更の効力発生時期までに、①変更する旨、②変更後の内容、③効力発生日、を周知することを定めており、料金の値上げを行うためにはこれらの条件を満たす必要があります。
⑴ 実体的要件
ア ①契約の目的に反しないこと
サービスの本質的な内容の変更がなく、合理的な範囲で定額利用料の値上げをするといった場合には、サブスクリプションサービス契約の目的には反しないと考えられます。
イ ②変更した内容の合理性
変更した内容が合理的かは、㋐変更の必要性、㋑変更後の内容の相当性、㋒利用規約の変更をすることがある旨の定めの有無及びその内容、㋓その他の変更に係る事情を考慮要素として客観的な視点から判断されます。
㋐ 変更の必要性
料金を値上げするに至った必要性として、市場環境の変化、物価の高騰などにより、現在の料金ではサービスを維持できなくなったなどの理由が考慮されると考えられます。
㋑ 変更後の内容の相当性
変更の必要性の理由に照らして過剰すぎないかなど、具体的な値上げ額が妥当かを検討すべきです。
㋒ 利用規約の変更をすることがある旨の定めの有無及びその内容
具体的に変更の条件や手続が定めておくことで合理性があるとより認められやすくなると考えられます。
㋓ その他の変更に係る事情
ユーザーに対して過度な不利益を与えないようにすべきであり、値上げが将来的なものとして効力発生までの猶予期間を設けること、値上げが生じるまでに不利益なくユーザーが退会できるようにすること、などといった措置を取ることが考えられます。
⑵ 手続的要件
実体的要件に加え、手続的要件として、定額利用料の値上げの効力発生時期、その変更の効力発生時期までに、①変更する旨、②変更後の内容、③効力発生日、を周知する必要があります。
具体的な周知の方法としては、公式ホームページのトップページに分かりやすい形で上記①~③を掲載することが考えられます。この点、ユーザーがホームページを見ていないなどの場合に、しばらく経ってから自身が変更内容に合意していないと主張することも考えられますので、効力発生日直前に掲載するのではなく、効力発生までに余裕をもって掲載すべきと考えられます。また、クレームをできるだけ防ぐためにも、上記に加えて、ユーザーに対して個別に電子メールで上記①~③の内容を連絡するとより望ましいです。
4 サービスを終了させる場合(消費者契約法に関して)
サービス提供者は、一般的に、サービス利用契約に基づいてユーザーに対して当該サービスを利用させる義務を負っているため、サービス提供者が一方的にサービスを終了させた場合、債務不履行に基づく損害賠償請求を受ける可能性があります。そのため、提供者は、当該利用契約に、提供者側が一方的にサービスの全部又は一部を停止、中止、変更又は終了させることができる旨の条項を設けておくことが考えられます。
もっとも、その場合でも、サービスを突然終了させたことによってユーザーが被る不利益の程度が大きいなど、利用者にとって不利な免責条項は、消費者の利益を一方的に害する条項(消費契約法第10条)として、無効になる可能性があります。そのため、利用契約に、サービスを終了させる際には事前に通知する旨の規定を設けた上、時間的猶予を十分にもってサービスの終了を事前に周知するなどして、ユーザーが一方的な不利益を被らないようにすべきと考えられます。
その他、上記のような配慮を行った場合でも、一方的に契約を終了させる旨の条項が無効と判断される恐れはあり、その際に、当該条項が無効と判断されたとしても、その他の条項まで無効とならない旨を記載して、無効となった当該条項以外の条項や契約全体までもが無効とならないように対応しておくことが考えられます。
5 返金、クーリング・オフを求められた場合(特定商取引法に関して)
サブスクリプションサービスにおいて、ユーザーに返金やクーリング・オフを求められた場合、必ずしも求めに応じる義務はないですが、特定商取引法のクーリング・オフ制度や、契約上で返金やクーリング・オフの規定を設けている場合には、応じなければなりません。サブスクリプションサービスにおいては、特に、特定商取引法の対象となる取引形態として、特定継続的役務提供(たとえば、エステティックサロンや語学教室など)及び通信販売が挙げられます。
特定継続的役務提供においては(同法第41条)、たとえば、月額課金のサブスクリプションサービスの場合、解約禁止期間が1か月ないし2か月の期間を超え、かつ、金額が5万円を超える場合には、「特定継続的役務」としてクーリング・オフなど特商法の規制が適用されることになります。
また、通信販売(同法第2条第2項)に該当する場合においては、販売条件を広告する場合、販売価格等とともに返品特約に関する事項などの具体的な記載事項が義務付けられており、事業者は、返品を認めない場合にはその旨を明確に記載する必要があり、返品の可否に関する明確な表示がない場合には、消費者は、商品を受け取ってから8日間は返品が認められています(同法第15条の3)。
また、通信販売に該当する場合には、広告表示に関して、景品表示法、不正競争防止法上の規制などの他に、特定商取引法において、一定の事項を広告としてホームページ等に表示する義務(同法第11条)などの広告規制も存在しますので注意が必要です(なお、扱う商材によっては、上記の他に個別の法律による広告規制がありますので、商材ごとに適用される法律を確認すべきです。)。
6 最後に
サブスクリプションサービスは、今後もますます広まっていくものであり、ユーザーを広く獲得するために非常に有用な手法と考えられますが、特に、利用料金を中心とした契約関係については、事前にしっかりと検討しておく必要があります。皆様がサブスクリプションサービスを進めるに当たり、利用規約の作成、レビューなど法的な対応を要する場合には弊所までどうぞご連絡ください。
以上
田島・寺西・遠藤法律事務所 監修 弁護士田島正広
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※ご連絡の際には、コラムをご覧になられた旨、及び、執筆弁護士名の記載がある場合には弁護士名をお伝えください。
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2025/05/07
労働問題
従業員が経歴詐称していた場合の対応について(石原光太郎弁護士)
従業員が経歴詐称していた場合の対応について
Q.従業員が経歴を詐称して入社していたことが判明しました。
(1) 当該従業員を解雇するなどして退職させることはできますか。
(2) 当該従業員を紹介した人材紹介会社の責任を何らか問えないでしょうか。
A.
(1) 経歴詐称が、最終学歴、職歴、犯罪歴等の重大な経歴詐称といえる場合には、懲戒解雇が有効とされる可能性はありますが、裁判において解雇が無効とされるリスク、当該従業員に裁判を起こされるリスクも考慮の上で懲戒解雇に踏み切るべきか、他の穏当な手段も含め慎重に検討すべきです。
(2) 人材紹介会社との人材紹介契約上直接の根拠規定があれば損害賠償等が可能です。また、直接の根拠規定がなくても、人材紹介会社が免責される旨の規定がないことを前提に、当該人材紹介会社が、当該従業員の経歴に関する調査確認義務を怠り、同契約に違反したといえれば、損害賠償請求ができます。
(説明)
目次
1 人材紹介会社に対する責任追及の法的根拠及び紛争の予防的対応
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第1 当該企業内部での対応
1 経歴詐称を理由とする雇用契約の終了
(1) 雇用契約の取消し
採用時の履歴書、面接時における経歴詐称は、使用者に対し、雇用契約締結を決定するか否かの判断の基礎となる情報を偽り、使用者の意思決定に間違い(意思表示の瑕疵)を生じさせますので、使用者は、錯誤(民法95 条)又は詐欺(民法96 条)を根拠に取り消しができる場合があります。
(2) 懲戒解雇
虚偽の経歴によって採用を得ようとする労働者を企業は信頼することはできず、安心して仕事を任せることはできませんので、経歴詐称は企業と従業員間の信頼関係を破壊する労働契約上の信義則違反であり、企業秩序を破壊するものとして懲戒解雇が許される場合があります(炭研精工事件・最高裁第一小法廷平成3年9月19日労働経済判例速報1443号27頁等)。
なお、経歴詐称を懲戒解雇事由とする就業規則上の根拠があることが大前提です(就業規則が未整備でしたら別途就業規則上の規定を設けて周知するなどの対応が予め必要になります(労働契約法7条、労働基準法106 条1項)。)。
しかし、裁判例上、懲戒解雇を有効とするような経歴詐称は、重要な経歴詐称(典型的には最終学歴、職歴、犯罪歴等があげられますが、それでも職種や個別事情によって結論は変わりうる点には注意が必要です。)に限定され、当該経歴をどれほど重視すべきか、当該経歴詐称と業務上の支障の程度等、具体的な経歴詐称の個別事情によって結論が変わり得ます。そして、仮に真実の経歴を知っていたのであれば、当該労働者と(少なくとも同一条件では)雇用契約を締結しなかったであろうと考えられ、また、客観的にもそのように考えるのが相当な場合には重要な経歴詐称にあたるとされ、懲戒解雇も有効と考えられています(スーパーバッグ事件・東京地裁昭和55・2・15・労働判例335号23頁、東京地裁平成22・11・10・労働判例1019号13頁)。
2 具体的予防策
(1) 採用前における履歴書記載事項の確認
採用面接の際、履歴書に記載された最終学歴、職歴、犯罪歴等の有無や具体的な事実関係、企業側が期待する能力、経験、任せる予定の仕事の具体的内容等について説明の上で、応募者がそれらの能力を従前の経歴、資格等から有しているか否かについて可能な限り具体的に確認する必要があります(職歴等重要な経歴について、履歴書の書き間違い、面接時の言い間違いなどの可能性もないとはいえませんので、上記可能性を排除できる程度に応募者に対して具体的な質問をするなどの対応が望まれます。そして、それら確認の内容を具体的に記録化することが後々の紛争時に重要な証拠資料になりえます。)。
さらに、職務に関連する重要資格の確認については免状等の原本を提出させるとともに当該免状を所管する公務所等に可能であれば照会し、資格の保有確認を徹底することが望まれます。
(2) 前職に対する照会
重要な職歴については前の職場(時期によっては現職場になることもあります。)に照会することも考えられます。
しかし、かかる照会については、個人情報保護の趣旨で職業安定法5 条の5 第1 項に「その業務に関し、求職者、労働者になろうとする者又は供給される労働者の個人情報を収集し、保管し、又は使用するに当たつては、その業務の目的の達成に必要な範囲内で、厚生労働省令で定めるところにより、当該目的を明らかにして求職者等の個人情報を収集し、並びに当該収集の目的の範囲内でこれを保管し、及び使用しなければならない。ただし、本人の同意がある場合その他正当な事由がある場合は、この限りでない」と規定されており、事業者としては、まず、情報収集等の必要性等が求められます(同条項本文)。
さらに、本人の同意があればより広範囲の個人情報の収集も認められるようにみえ(同条項ただし書)、また、後記指針においては、本人(求職者等)の自由な意思に基づき、本人により明確に表示された同意によるものである必要があるとされています。
しかし、後記厚生労働省の指針にも記載があるとおり、業務との関係で必要性・相当性のないようなプライバシー情報、特にセンシティブな情報(人種、民族、思想、信条、病歴等)の収集についてはよほどの例外的な事情がない限りは厳に控えるべきです。これらの情報については、本人の真摯な同意が想定され難いことも容易に想定されますので、たとえ形式的に書面によって本人から同意を得ていたとしても、プライバシー侵害が観念されてしまい紛争リスク(損害賠償請求を受けるリスク)が考えられますので、収集できる個人情報の範囲は、職務遂行との関係で必要かつ相当な範囲に限られるものとして対応すべきです。
一方で、上記観点から収集が許容される履歴書記載事項(前職における職歴、賞罰歴、資格の有無等)についてそれら事実の有無を前職に照会して確認することは、必要かつ相当であり適法であると解され、本人同意をとることを前提に照会して確認することが許容されます(後記指針第五・一(三))。
これら情報収集等の具体的な手続については、厚生労働省が定めた次の指針による必要がありますのでご留意下さい。
○職業紹介事業者、求人者、労働者の募集を行う者、募集受託者、募集情報等提供事業を行う者、労働者供給事業者、労働者供給を受けようとする者等がその責務等に関して適切に対処するための指針 (平成十一年労働省告示第百四十一号) (最終改正 令和六年厚生労働省告示第三百十八号) 【一部抜粋】
第五 求職者等の個人情報の取扱いに関する事項(法第五条の五)
一 個人情報の収集、保管及び使用
(一) 職業紹介事業者、求人者、労働者の募集を行う者、募集受託者、特定募集情報等提供事業者、労働者供給事業者及び労働者供給を受けようとする者は、法第五条の五第一項の規定によりその業務の目的を明らかにするに当たっては、求職者等の個人情報(一及び二において単に「個人情報」という。)がどのような目的で収集され、保管され、又は使用されるのか、求職者等が一般的かつ合理的に想定できる程度に具体的に明示すること。
(二) 職業紹介事業者、求人者、労働者の募集を行う者、募集受託者、特定募集情報等提供事業者、労働者供給事業者及び労働者供給を受けようとする者は、その業務の目的の達成に必要な範囲内で、当該目的を明らかにして個人情報を収集することとし、次に掲げる個人情報を収集してはならないこと。ただし、特別な職業上の必要性が存在することその他業務の目的の達成に必要不可欠であって、収集目的を示して本人から収集する場合はこの限りでないこと。
イ 人種、民族、社会的身分、門地、本籍、出生地その他社会的差別の原因となるおそれのある事項
ロ 思想及び信条
ハ 労働組合への加入状況
(三) 職業紹介事業者、求人者、労働者の募集を行う者、募集受託者、特定募集情報等提供事業者、労働者供給事業者及び労働者供給を受けようとする者は、個人情報を収集する際には、本人から直接収集し、本人の同意の下で本人以外の者から収集し、又は本人により公開されている個人情報を収集する等の手段であって、適法かつ公正なものによらなければならないこと。
(四) 職業紹介事業者、求人者、労働者の募集を行う者、募集受託者、特定募集情報等提供事業者、労働者供給事業者及び労働者供給を受けようとする者は、高等学校若しくは中等教育学校又は中学校若しくは義務教育学校の新規卒業予定者から応募書類の提出を求めるときは、厚生労働省職業安定局長(以下「職業安定局長」という。)の定める書類により提出を求めること。
(五) 個人情報の保管又は使用は、収集目的の範囲に限られること。ただし、他の保管若しくは使用の目的を示して本人の同意を得た場合又は他の法律に定めのある場合はこの限りでないこと。
(六) 職業紹介事業者、求人者、労働者の募集を行う者、募集受託者、特定募集情報等提供事業者、労働者供給事業者及び労働者供給を受けようとする者は、法第五条の五第一項又は(二)、(三)若しくは(五)の求職者等本人の同意を得る際には、次に掲げるところによらなければならないこと。
イ 同意を求める事項について、求職者等が適切な判断を行うことができるよう、可能な限り具体的かつ詳細に明示すること。
ロ 業務の目的の達成に必要な範囲を超えて個人情報を収集し、保管し、又は使用することに対する同意を、職業紹介、労働者の募集、募集情報等提供又は労働者供給の条件としないこと。
ハ 求職者等の自由な意思に基づき、本人により明確に表示された同意であること。
(3) 退職証明書の提出
上記(2)の前職への照会について、昨今の個人情報やプライバシー保護の意識の向上から問い合わせに応じない企業も増加しているという現状がありますので、このような照会による調査の実効性には限界もあります。
この点の解決方法として、使用者は退職証明交付義務を負っていることから(労働基準法22 条1項)、応募者に、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(解雇の場合解雇理由を含む。)の記載のある退職証明書を前職より取得し提出させるという対応も考えられ、経歴詐称を予防するための有効な手段と思料されます。
(4) 試用期間を設けること
採用時に数か月の試用期間を設けている企業も多いと思われ、試用期間中に当該従業員の仕事ぶりをみて経歴詐称の有無等を判断することになります。
その場合、経歴詐称が重要な経歴詐称とまではいえないケースや、重要な経歴詐称といえるかどうか微妙なケース(例えば、職歴について全くないわけではなく虚偽とまではいえないが職務経験が企業側の求めている水準に達していないケース、経歴詐称ではないがパフォーマンスが低く指導改善や配置転換などによる対処が困難なケースなど)においては、本採用を拒否するという対応も考えられます。
この点、試用期間中の解雇については、解約権留保付労働契約における解約権行使であり、本採用後の解雇よりは認められるためのハードルは低いものと解されていますが、それでも、紛争リスクを回避するために、上記のような従業員に対しては、本採用の拒否という強い手段に出るべきなのか、退職勧奨による自主退職や、合意退職などのより穏当な方法も含め、個別具体的事情に応じて慎重に検討する必要があります。これらの判断は非常に複雑で微妙なものとなりえますのでその際は弁護士にご相談されることをおすすめいたします。
3 採用後経歴詐称が発覚した際の対応
(1) 経歴詐称をした従業員に対する対応
ア 事実関係調査
経歴詐称の事実の有無、その範囲等について調査の上、証拠上確実に認定できる部分を確認することが必要です。
まずは、客観的に収集できる情報、資料等を、証拠隠滅等によって事案の解明を防止する観点から、当該従業員及び人材紹介会社にアプローチする前に収集することが望まれます。
その後、当該従業員に対し事実関係をヒアリングし、経歴詐称の範囲、動機、人材紹介会社の当該経歴詐称に関する確認状況等を丁寧に確認すべきです。
そして、経歴詐称の範囲、業務上の支障の程度等、仮に真実の経歴を知っていたのであれば、当該労働者と(少なくとも同一条件では)雇用契約を締結しなかったであろうと考えられるか否かも含めた当該経歴詐称の実態、悪質性、人材紹介会社の当該経歴の確認状況に関する諸般の事情を明らかにすることが必要です。
イ 事実関係に基づく対応
そして、経歴詐称の個別具体的な事情に応じて、雇用の継続又は終了という選択をすることになります。
雇用を終了させるものとした場合、懲戒解雇及び損害賠償という手段が最も強い手段として想定されますが、解雇が有効であると裁判上認められるかどうかは、当該経歴詐称の評価、職務上要求される能力との関係などによります。また、裁判例に照らして解雇が有効と認められるだけの証拠が揃っていたとしても、当該従業員が、経済的・精神的に追い詰められ不当解雇として争ってくるリスクは想定され、それに対応する人的・経済的コストも十分に考慮する必要があります。
さらに損害賠償請求について、損害が観念できるか、当該経歴詐称と相当因果関係のある損害の範囲等について慎重な検討が必要です。
そこで、具体的な事実関係にもよりますが、相手方が退職の意向を示しているような場合などには、退職勧奨による自主退職又は合意退職という手段も、上記リスクを回避する上で、穏当かつ現実的・合理的な手段になるものと思料されます。
このあたりの判断は非常に微妙な部分ですので、弁護士にご相談されることをおすすめいたします。
第2 人材紹介会社に対する対応
1 人材紹介会社に対する責任追及の法的根拠及び紛争の予防的対応
人材紹介会社(以下単に「紹介会社」といいます。)との間には人材紹介契約(以下単に「紹介契約」といいます。)が締結されていると思料されますので、紹介契約における責任追及の根拠を検討することになります。
以下個別に検討します。
(1) 人材紹介手数料返金条項
紹介契約書においては、従業員の帰責事由で退職に至った場合の返金規定が規定されるケースが通常です。その場合、当該経歴詐称によって当該従業員が退職に至るなど、かかる規定に該当する場合には、紹介手数料の返金請求ができます。
しかし、かかる返金規定については数ヶ月等の期間制限が設けられ、同期間経過後は紹介会社が完全に免責されるものと規定されているケースが多く、同期間経過後に経歴詐称が発覚するような場合には紹介会社が一切返金に応じず、損害賠償請求にも対応しないケースも多くみられます。
そこで、かかる免責の範囲を制限するように、紹介会社に故意または(重)過失ある場合には免責されない旨のただし書を規定するなど、紹介契約の内容を見直すことが有益です。
(2) 損害賠償条項
紹介された者に経歴詐称があった場合には賠償責任を負うなどの直接の賠償の根拠があれば、同条項を根拠に賠償請求ができますが、かかる規定をおくことは少ないです。しかし、上記?と同様、可能な限り損害賠償請求ができるような契約内容にすることが望まれます。
(3) 債務不履行に基づく損害賠償請求
上記返金規定の要件に該当しない場合や、損賠賠償の条項がない場合でも、紹介契約上、損害賠償義務を免責する規定がないことを前提に、当該経歴詐称が、紹介会社の故意又は過失によるもので人材紹介契約上の債務不履行といえる場合には、損害賠償ができます。
例えば、人材紹介会社である相手方が、通常求められるべき経歴の確認を行わないなど、その紹介者を紹介先に紹介する際に、紹介契約上の債務不履行を構成するような事情があれば、それによって会社に生じた損害(例えば、職務上必要な能力を有さないことで、増員が必要になった際の費用等)を求めることはあり得ます。
一方、当該従業員の経歴詐称について、当該従業員の詐称工作が巧妙で、紹介会社が十分な確認を行っていると認められるような場合には、債務不履行上の過失があるとまではいえない可能性もあり得ます。
以上のとおり、会社に請求権が生じるかどうかは、上記のとおり、人材紹介会社がどのように経歴について調査確認を行っていたのか、それをどのように説明報告していたのかなどといった具体的事情に左右され、さらに具体的な調査確認義務や説明・報告義務の内容について規定されていない場合、業界慣行に従った一般的な注意義務を裁判所等が法的に評価するという非常に曖昧な状況になり、紛争化のリスクは高まります。
そこで、それらの紹介会社の調査確認義務及び説明・報告義務を可能な限り明確化し(例えば、資格に関するものについては免状の原本を確認する。職歴についてはより具体的に紹介対象者に聴取を行いそれを記録化の上で報告させる、場合によっては紹介候補者同意の上、重要な職歴について前職等に必要かつ相当な範囲で照会をするなどして当該調査確認したことを紹介先に説明する義務を明確化するなど)、経歴詐称が紹介会社によって見破られないといった状況を防ぐとともに、仮に経歴詐称が事後的に判明した場合、紹介会社がそれら紹介契約上の義務に違反しているといいやすい状況を可能な限り確保しておくことが望まれます。
2 採用後経歴詐称が発覚した際の対応
紹介手数料返金条項又は損害賠償条項によって対応が可能であれば特に問題はありません。
しかし、前述のとおり、そのような条項がない場合や、免責規定が置かれている場合は、経歴詐称が重要な経歴を偽るもので、また、紹介会社が紹介者である当該従業員に関し、その経歴について必要な確認を怠るなど、紹介契約上通常求められる手続を行わず、当該従業員が、本来有すべき能力を有さず、会社から退職せざるを得ない客観的状況があり、会社に損害が生じたといえるような場合であっても、債務不履行に基づく損害賠償は紹介会社から認められないと争われるリスクが高いと思料されます。
その場合は、交渉によって妥協点を探ることになりますが、非常に難しい交渉になるものと思われます。
そこで、上記リスクを逓減するために、上記1のとおり、人材紹介会社が経歴詐称を発生させないために行うべき事項を具体的に明確化し紹介契約条項に落とし込むなど、人材紹介会社の調査確認義務を明確化し、責任追及をしやすい状況を確保しておくことが望ましいものと思料されます。
第3 最後に
経歴詐称は、特に専門的な業種や、社会的に高い信頼性を求められる職種になればなるほど、その影響は大きくなります。
そのため、企業としては、履歴書記載事項等について採用面接時に重要な経歴について具体的に聴取して丁寧に確認をする、免状等については原本を提出させて確認する、必要に応じて相当な範囲で前職等に照会を行う、退職証明書や試用期間の活用、さらに、人材紹介会社に対しては、経歴詐称が起こった場合にその責任を追及できるだけの紹介契約上の根拠を可能な限り具体的に整備しておくことが非常に重要になります。
以上
弁護士 石原 光太郎
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2023/09/22
インターネット・情報
中途採用により入社した社員が前職で入手した情報を転職先に持ち込んでいた場合の対応(田島・寺西・遠藤法律事務所)
中途採用により入社した社員が前職で入手した情報を転職先に持ち込んでいた場合の対応
Q. 入社した社員が、前職で使用していたUSBメモリを当社に持ち込み、当人が当該USBメモリに含まれる情報(顧客情報等)を勝手に当社で使用した場合に、当人や当社が何らか責任を負うことはありますか。また、そのような場合、当社が責任を免れるためにはどのような点に留意すべきでしょうか。
A.
1 転職者の責任
顧客情報等が含まれるUSBメモリの持出しとその利用について業務上横領罪や背任罪等の刑事責任を負うおそれや、持ち出した情報が転職元企業の規定する機密情報等に当たる場合には転職元企業から債務不履行に基づく損害賠償請求を受けるおそれ(民法415条)があるほか、持ち出した情報が不正競争防止法上の「営業秘密」にあたる場合には、同法上の差止請求や損害賠償請求を受けるおそれ(不正競争防止法3条、4条)、営業秘密侵害罪に該当するおそれがあります(同法21条1項)。
2 転職先の会社の責任
転職者が持ち出したUSBメモリに含まれる情報が不正競争防止法上の営業秘密にあたる場合には、同法上の差止請求や損害賠償請求を受けるおそれ(不正競争防止法3条、4条)、営業秘密侵害罪に該当するおそれがあるほか(同法21条1項)、民法上の不法行為責任を負うおそれも考えられます(民法709条、715条)。
3 転職先の会社の対応
転職者の転職元企業との間における契約関係の確認、転職者採用時における誓約書の取得、採用後の業務内容の定期的な確認等を行って、不正競争防止法上の「重大な過失」が認められないように対処しておく他、秘密情報に関する社内ルール(営業秘密管理規程)の周知を行って、従業員等の秘密情報に対する認識を向上させておくことが考えられます。
(説明)
1 転職者のリスク
(1) 刑事責任(業務上横領罪・背任罪)
当該転職者の立場や持ち出した物によっては、転職者に業務上横領罪や背任罪が成立するおそれがあります(なお、転職者が転職元企業の所有物だと知らなかったとしても、証拠から故意が認められるおそれがあります)。
(2) 債務不履行に基づく損害賠償請求
当該転職者が退職後も転職元企業との間で秘密保持義務を負う場合には、転職者は、転職元企業から債務不履行に基づく損害賠償請求を受けるおそれがあります。
(3) 不正競争防止法違反を理由とする民事上の請求及び刑事罰
ア 民事上の請求
当該転職者が退職後に秘密保持義務を負っていなくとも、当該情報が不正競争防止法上の営業秘密にあたる場合には、転職者が、営業秘密を正当に取得した後に、管理任務に反して営業秘密を領得し、図利加害目的で自ら使用又は他者に開示した場合には、営業秘密侵害にあたるものとして、転職元企業から損害賠償請求を受けるおそれがあります(不正競争防止法2条1項7号、4条)※以下、本記事では、転職者による営業秘密の正当取得後の不正開示について解説していますので、営業秘密の不正取得に由来する類型については割愛しております。
イ 刑事罰(営業秘密侵害罪)
また、前記アの場合においては、転職者は、営業秘密侵害罪にも該当します(不正競争防止法21条1項3号ないし6号)。
なお、営業秘密とは、①秘密として管理されていること(秘密管理性)②事業活動に有用な情報であること(有用性)③公然と知られていないこと(非公知性)を満たす技術上又は営業上の秘密をいいます。
2 転職先の会社のリスク
(1) 不正競争防止法違反を理由とする民事上の請求及び刑事罰
ア 民事上の請求
転職者が持ち出したUSBメモリに含まれる情報が不正競争防止法上の営業秘密にあたる場合、転職先の会社が意図せぬ形で他者の秘密情報を取得してしまうおそれがあります。
これについて、転職者が、営業秘密を正当に取得した後に、当該転職者による営業秘密不正取得行為があり、転職先の会社が、当該事情を知りながら、または重大な過失により当該事情を知らずに取得して、自ら使用・他者に開示した場合(不正競争防止法2条1項8号・9号)には、営業秘密侵害行為に該当し、転職先の会社が不正競争防止法上の差止請求や損害賠償請求を受けるおそれがあります(不正競争防止法3条、4条)。
イ 刑事罰
また、転職者が、営業秘密を正当に取得した後に、当該転職者による営業秘密不正取得行為があり、転職先の会社が、当該事情を知りながら、当該営業秘密を取得して、自ら使用又は他者に開示した場合(不正競争防止法21条1項7号)には、営業秘密侵害罪に該当します。
(2) 民法上の不法行為責任
転職者の行為が不正競争防止法上の営業秘密侵害行為には当たらない場合でも、転職者が転職元企業に対して不法行為に基づく損害賠償責任を負う場合には、転職先の会社が民法上の使用者責任を負うおそれも考えられます(民法709条、715条)。
3 転職先の会社が対応すべき事項
転職者の入社時に転職先の会社が対応しておくべき点について、「重大な過失」がないとされるために以下のような取組みが有効と考えられ、上記2記載の転職先の会社のリスクを回避していくことができるものと考えられます(なお、以下の取組みにより、常に「重大な過失」がないとされるものではないことにご留意ください)。(経済産業省「秘密情報の保護ハンドブック~企業価値向上に向けて~」5-2参照)
その他、営業秘密侵害行為については、上記のとおり「重大な過失」の有無の判断が検討されますが、営業秘密侵害行為に該当するとまでは認定されなくとも、従業員における一般不法行為の成立が認定される場合もあり、その場合、転職先の会社においても、「重大な過失」よりも認定されやすい「過失」の不法行為責任が認定されるおそれがありますので、そういった場合に備える意味でも以下の対応をしておくことがよいと考えられます。
(1) 転職者の契約関係の確認
転職者が、転職元企業との関係で負っている秘密保持義務、競業避止義務といった義務の有無やその内容を確認することが必要です。
(具体例)
・転職元の就業規則や、退職時に交わしている契約書や誓約書等を確認し、秘密保持義務や、競業避止義務等の有無や内容を面接やアンケート等で確認してください。
・転職者が、上記のような契約書や誓約書等の写しを転職元から交付されていなかったり、その内容が「すべての情報を持ちだしてはならない」といったものであるなど、転職者が負っている義務の範囲が漠然としている場合であっても、転職者本人に対する記憶喚起やインタビュー等を通じて、できるだけ義務の範囲を特定するよう努めてください。
・転職者が義務を負っているかどうかに関わらず、後記(2)のとおり「誓約書の取得」等も実施することが望ましいです。なお、転職元において中核的な役割を担っていた転職者を受け入れる際には、当該技術情報の性質や当該転職者の従前の職務内容等に応じ、当該転職者が転職元企業との間で秘密保持義務や競業避止義務を負っている可能性が高いことに留意した、より慎重な対応を行うことが考えられます。
・以上の対応を行ったことについて、採用時の面談録やレポート等の書面の形で記録・保存しておいてください。
(2) 転職者採用時における誓約書の取得等
転職者に、転職元企業での秘密情報を自社内に持ち込ませないよう注意を喚起するとともに、不正競争防止法上の「重大な過失」が無いとの主張の一つの根拠とするために、転職者の採用時に書面での確約を取っておくことが有効です。
(3) 採用後の管理
転職者が従事する業務内容を定期的に確認してください(私物のUSBメモリ等の記録媒体の業務利用や持込みを禁止するといった取組みも有効と考えられます)。
4 秘密情報に関するルール(営業秘密管理規程)の周知
上記3の他、秘密情報の取扱い方法等に関するルールの周知、秘密情報の記録された媒体へ秘密情報である旨の表示を行うこと等により、従業員等の秘密情報に対する認識を向上させ、同時に、不正に情報漏えいを行う者が「秘密情報であることを知らなかった」、「社外に持ち出してはいけない資料だと知らなかった」、「自身が秘密を保持する義務を負っている情報だとは思わなかった」といった言い逃れができないようになるものと考えられます。(経済産業省「秘密情報の保護ハンドブック~企業価値向上に向けて~」)3-2参照)
たとえば、営業秘密管理規程には、従業員等が秘密情報の取扱いや、秘密情報に関して秘密保持義務が課されていること等について、十分理解できるようにするため、以下のような内容を入れておくことが考えられます。
①適用範囲
役員、従業員、派遣労働者、委託先従業員(自社内において勤務する場合)等、本規程を守らなければならない者を明確にします。
②秘密情報の定義
本規程の対象となる情報の定義を明確化します。
秘密情報の定義に際しては、受領者による秘密情報の認識の範囲を明確化することが重要であり、秘密である旨を明示して開示される情報を秘密情報と指定することや、秘密情報の保護を図るため、記録媒体そのものを秘密情報と指定すること等が考えられます。
③秘密情報の分類
分類の名称(たとえば、「役員外秘」、「部外秘」、「社外秘」)及び各分類の対象となる秘密情報について説明します。
④秘密情報の分類ごとの対策
「秘密情報が記録された媒体に分類ごとの表示をする」、「アクセス権者の範囲の設定」、「秘密情報が記録された書類を保管する書棚を施錠管理して持出しを禁止する」、「私物のUSBメモリの持込みを制限し複製を禁止する」等、分類ごとに講ずる対策を記載します。
⑤管理責任者
秘密情報の管理を統括する者(たとえば、担当役員)を規定します。
⑥秘密情報及びアクセス権の指定に関する責任者
分類ごとの秘密情報の指定やその秘密情報についてのアクセス権の付与を実施する責任者(たとえば、部門責任者、プロジェクト責任者)について規定します。
⑦秘密保持義務
秘密情報をアクセス権者以外の者に開示してはならない旨等を規定しておきます。
⑧罰則
従業員等が秘密情報を漏えいした場合の罰則を定めておきます。
5 最後に
中途採用を行う会社においては、当該転職者が前職で身に着けたノウハウ等に期待して採用を行っているものと一般的に考えられますが、転職者を採用する会社においても、当該転職者と転職元企業との間におけるトラブルに巻き込まれるおそれがあり、転職元企業から訴えられたり、当該転職者とともに損害賠償責任を負うおそれがあるため、上記のような事項を確認しておくことが望ましいと考えられます。
以上
田島・寺西・遠藤法律事務所
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2023/08/30
インターネット・情報
個人データの取扱い委託先事業者における個人データの漏えい対応(西川文彬弁護士)
個人データの取扱い委託先事業者における個人データの漏えい対応
Q1.委託先における個人データ漏えい時における委託元の報告義務及び通知義務
当社(委託元)の個人データの取扱いを委託している会社(委託先)から「不正アクセスにより、個人データを格納しているサーバーから委託された個人データを含むデータが漏えいした可能性がある」との連絡を受けました。
不正アクセスを受けて漏えいした可能性があるのは委託先であるため、当社(委託元)には、漏えいについて、個人情報保護委員会へ報告したり、本人へ通知をする義務はないという理解でよいでしょうか。Q2.委託先において報告及び通知義務が免除される場合
当社は、他社から個人データの取扱いの委託を受けているのですが、不正アクセスにより、個人データを格納しているサーバーから委託を受けている個人データが漏えいしたかもしれません。
委託元に対しては、個人データが漏えいした可能性があること連絡しようと思っていますが、その他に、個人情報保護委員会への報告や本人への通知も行わなければならないでしょうか。A1.いいえ。個人データの取扱いを委託している場合、委託先だけではなく、委託元である個人情報取扱事業者にも個人情報保護委員会(※)への報告義務(以下「報告義務」といいます。)及び本人への通知義務(以下「通知義務」といいます。)が課されます。
※ 個人情報保護委員会が個人情報の保護に関する法律(以下「法」といいます。)第150条第1項の規定により報告を受理する権限を事業所管大臣に委任している場合には、当該事業所管大臣が報告先となります。
A2.委託先においては、報告義務及び通知義務が免除される場合があります。
委託先は、委託元である個人情報取扱事業者に対し、個人情報保護委員会規則(以下「規則」といいます。)が定める適切な通知をしたときは、報告義務及び通知義務を免れ、この場合、委託先からの通知を受けた委託元のみが報告及び通知をすることとなります。
(説明)
1 報告義務及び通知義務の根拠
以下に引用するとおり、報告義務は法第26条第1項本文に、通知義務は同条2項に、それぞれ定められており、漏えい等が発生し、又は発生したおそれがある個人データを取り扱う個人情報取扱事業者(委託元及び委託先)が報告義務及び通知義務の主体となります(個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)(以下「GL通則編」と記載します。)3-5-3-2、3-5-4-1参照)。
~法第26条抜粋~
1 個人情報取扱事業者は、その取り扱う個人データの漏えい、滅失、毀損その他の個人データの安全の確保に係る事態であって個人の権利利益を害するおそれが大きいものとして個人情報保護委員会規則で定めるものが生じたときは、個人情報保護委員会規則で定めるところにより、当該事態が生じた旨を個人情報保護委員会に報告しなければならない。…略…
2 前項に規定する場合には、個人情報取扱事業者…略…は、本人に対し、個人情報保護委員会規則で定めるところにより、当該事態が生じた旨を通知しなければならない。…略…
~~2 委託先が報告義務及び通知義務を免れる場合
委託先においては、報告義務を負う委託元に対し、次に掲げる①から⑨までの事項(GL通則編3-5-3-3に詳細の記載があります。)のうち、その時点で把握しているものを通知したときは、報告義務及び通知義務が免除されます(法26条1項但書、同条2項括弧書、規則9条同8条。GL通則編3-5-3-5、3-5-4-1参照。)。
① 概要
② 漏えい等が発生し、又は発生したおそれがある個人データの項目
③ 漏えい等が発生し、又は発生したおそれがある個人データに係る本人の数
④ 原因
⑤ 二次被害又はそのおそれの有無及びその内容
⑥ 本人への対応の実施状況
⑦ 公表の実施状況
⑧ 再発防止のための措置
⑨ その他参考となる事項~法第26条抜粋~
1 個人情報取扱事業者は、…略…当該事態が生じた旨を個人情報保護委員会に報告しなければならない。ただし、当該個人情報取扱事業者が、他の個人情報取扱事業者又は行政機関等から当該個人データの取扱いの全部又は一部の委託を受けた場合であって、個人情報保護委員会規則で定めるところにより、当該事態が生じた旨を当該他の個人情報取扱事業者又は行政機関等に通知したときは、この限りでない。
2 …略…個人情報取扱事業者(同項ただし書の規定による通知をした者を除く。)は、本人に対し…略…通知しなければならない。
~~3 補足
(1)本人への通知義務の例外
本人に対する通知義務を負う場合であっても、本人への通知が困難である場合(連絡先が古く通知できない場合等)は、通知に代えて、本人の権利利益を保護するために必要な代替措置(事案の公表等)を講ずることが認められます(法26条2項但書、GL通則編3-5-4-5参照)。
~法第26条抜粋~
2 …略…ただし、本人への通知が困難な場合であって、本人の権利利益を保護するため必要なこれに代わるべき措置をとるときは、この限りでない。
~~(2)報告義務を免除された委託先の委託元への協力
委託先は、委託元に対し、前記「2」の通知をしたとしても、委託元の報告義務の履行に当たって、事案の把握を行うことのほか、必要に応じて委託元の漏えい等報告に協力することが求められます(GL通則編3-5-3-5参照)。
4 最後に
個人データの取扱いの委託は広く行われているところ、委託先に漏えいが生じた場合には、以上のように委託元においても適切に対応することが求められます。
また、平時においても、委託元には、委託先に対する監督義務(法25条)が課されておりますので、個人データの取扱いを委託する際には、委託先との適切な委託契約の締結をすることのほか、委託先における委託された個人データの取扱状況を把握する等といったことが重要となります。
弁護士 西川 文彬
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2023/08/23
労働問題
ハラスメント加害者に対するヒアリング方法について(西川文彬弁護士)
ハラスメント加害者に対するヒアリング方法について
Q.ハラスメント被害者からの内部通報があり、加害者のヒアリングを実施することになりました。ヒアリング時は、どのようなことに気を付ければいいでしょうか。
A.ヒアリングは、2名体制で行うことが望ましく、5W1H(いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どうした)を意識して、具体的に聴き取る必要があります。また、客観的な証拠を得ている場合には、その提示のタイミングにも配慮が必要です。その他、記録のため、ヒアリングを録音しておくことも重要です。
【説明】
1 ヒアリング(以下「聴取」と記載します。)時の留意点
(1)聴取担当者の人数
実効的な聴取及び適正性を担保の観点から、1名体制を避け、2名体制(聴き取り担当、メモ取り担当)が望ましいでしょう。
(2)冒頭に伝えておくべきこと
加害者に対し、正直に話さなければならないこと、ヒアリング内容について他の従業員に話してはいけないこと等を伝え、了承を得ておくことも重要です。
他方、加害者による通報者探しを避けるため、内部通報があったことは告げないようにしてください。
(3)事実の聴取方法
いきなり核心を突くクローズな質問(イエス、ノーで答えられる)は避け、周辺事実からオープンな質問をはじめて、徐々に聴取対象の事実関係について触れていくようにしてください。
聴き取りの際には、常に、5W1H(いつ、どこで、だれが、何を、なぜ、どうした)を意識して、回数や期間等も可能な限り具体的かつ正確に聴き取る必要があります。
また、加害者と議論することなく、淡々と事実を確認することを意識してください。もし、加害者の弁解と矛盾する客観的な証拠を取得できている場合には、加害者の弁解を一通り聞いた後、当該証拠を示すことが効果的です。
なお、聴取に際しては、通報者を特定させる情報を加害者に伝えないように、伝えてはいけない情報を整理しておくことも重要です。
(4)録音の要否等
最初に「記録のため録音させてもらいます。」と伝えて録音しておくことが望ましいでしょう。
なお、加害者が録音している場合があることにも留意が必要です。
2 聴取前の準備及び聴取後の記録
(1)聴取に先立つ準備
時系列等に沿った事案の正確な把握と先立って収集しておいた証拠を整理しておくとよいでしょう。
また、加害者の聴取に先立って、通報者(特に被害者と同一である場合)には、「加害者に通報をしたことが知られるリスクがあること」を説明し、当該リスクについて了承を得ること、必要に応じて、上司等の関係者からの聴取を先行することが重要になる場合があります。
(2)聴取結果の記録
加害者がハラスメント行為を認めるようであれば、聴取したハラスメント行為、動機、反省の意などを書面にまとめ、同書面に加害者から署名をもらって記録として保管しておくとよいでしょう。
3 最後に
加害者への聴取は、ハラスメント調査で重要な局面であり、聴取に臨むにあたっては、事案の把握や質問内容の検討など、入念な準備が必要となります。
実効的な聴取を実施するために、以上のようなことを意識していただくとよいでしょう。
以上
弁護士 西川 文彬
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