コラム・企業法務相談室

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> 2017/04/04 商取引

強制執行と銀行口座の調査について

【Question】
 民事訴訟で「被告は原告に対して●万円を支払え」という勝訴判決を勝ち取り,その判決は確定したのですが,相手方が判決に従った支払いをしてくれません。

 相手方は預貯金を蓄えているように思えるため,相手方の預貯金に対して強制執行することを検討しているのですが,相手方がどこの金融機関に口座を保有しているか全くわからない状態にあります。
 相手方が保有している預貯金口座を調査する手立てはないでしょうか。

【Answer】
 弁護士会照会制度を利用することにより,以下の金融機関から「預金口座の有無」,「支店名」,「口座科目」,「預金残高(回答日時点)」の情報を得られる可能性があります(2017年4月1日時点)。
・ 三井住友銀行
・ みずほ銀行
・ 三菱東京UFJ銀行
・ ゆうちょ銀行

 なお,上記以外の金融機関については,照会への回答に口座名義人の同意が必要とされる場合が多く,その場合,「口座名義人の承諾がない場合は回答できない」という旨の回答がなされることになります。それゆえ,口座情報を得られる可能性は低いと言えます。

【解説】
 弁護士会照会制度は,弁護士法第23条の2に規定された法律上の制度です。弁護士が受任した事件について証拠等を収集し,事実を調査するなど,その職務活動を円滑に処理するための手段として,法律上認められたものです。
 弁護士会が「照会権」を有しており,個々の弁護士は弁護士会に対する「照会申出権」を有しています。事実の調査等のため,弁護士が弁護士会に対して照会申し出をすると,弁護士会から照会先に必要な事項の報告を求め,照会先から弁護士会に回答がなされます。照会申し出をした弁護士は,弁護士会を経由して照会先からの回答を得ることになります。

 従前は,金融機関の多くが,弁護士照会への回答をするにあたっては口座名義人の同意を要求し,これがない場合には照会事項に回答しないという運用をしていました。
 しかしながら,今般,三井住友銀行及びみずほ銀行においては,判決や和解調書等の債務名義があるケースにおいて,債権差押えの準備のための預金残高の全店照会に応じる運用が開始されました。また,三菱東京UFJ銀行やゆうちょ銀行においても,近時の傾向として,同様のケースでの債権差押えの準備のための弁護士会照会に対して,協力的な運用をするようになっています(2017年4月1日時点)。

 勝訴判決を獲得後に預金債権の差押えをするにあたっては,金融機関名と取扱い支店名まで特定する必要があり,支店名まで特定されていない場合には差押債権の特定を欠くとして,債権差押え申立は不適法として却下されてしまいます。それゆえ,勝訴判決などの債務名義を得ても,口座情報を十分に調査できないことから,差押の対象となる債権が特定できないとして差し押さえることができず,勝訴判決が「絵に描いた餅」となっていたケースが散見されました。
 今般,一部の金融機関とはいえ三大メガバンクとゆうちょ銀行が,債権差押えの準備のための弁護士会照会に応じる運用を取るようになったことは,勝訴当事者による債権差押えの可能性を開き,権利の実現の一助になると言えるでしょう。

 ちなみに,弁護士会照会の1件当たりの費用(東京弁護士会に支払うべき費用・手数料※)は,8344円です(手数料7560円,郵便料784円。2017年3月16日現在)。また,法律扶助事件(法テラス利用の事件)の場合には,手数料7560円が免除され,郵便料784円のみの負担で利用することができます(2017年3月16日現在)。
(※上記金額は弁護士会照会のための実費であり,調査等を受任した弁護士に対する弁護士報酬とは異なります。)

 なお,確定判決によって確定した権利については,消滅するまでの時効期間は10年とされています(民法174条の2第1項)。
 過去に勝訴判決を得ながら,預貯金口座の特定の問題等で強制執行ができずにいた方は,時効により権利が消滅する前に,弁護士会照会により預貯金の有無等を調査されることを検討する価値はあるのではないかと思料します。

弁護士 進藤 亮

                 


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