コラム「企業法務相談室」一覧

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  • 2015/09/11 商取引 WEB上におけるプライバシーポリシー(個人情報の利用目的)の表示(田島・寺西・遠藤法律事務所)

    WEB上におけるプライバシーポリシー(個人情報の利用目的)の表示

    Q 弊社はウェブサイトを改正し,ウェブ上で申込みを受けてサービスを提供する新ビジネスを考えています。それにあたり,利用規約とともにプライバシーポリシーを定める必要があると聞きました。プライバシーポリシーを定めたとして,ウェブ上でどのように表示させるべきでしょうか。

    A ガイドラインにしたがって「公表」及び「明示」する必要があります。

    1 プライバシーポリシーとは

     まず,プライバシーポリシー(個人情報規約ないしは個人情報保護方針)とは,個人情報についてその収集や活用,管理,保護等に関する取扱いの方針を明文化したものです。

     プライバシーポリシーを定義し,プライバシーポリシーを定める旨を直接的に規定する法律は存在しませんが,個人情報保護法において,個人情報を扱うウェブサイトを開設,運営等する場合について必要な通知,公表,明示等が定められています。

     プライバシーポリシーは,目的・手段において適切に各個人の情報を取得するために必要であり,以下のような内容を有するウェブサイトにおいてはその制定が必要です。

    ・商品や各種サービスの申込み,確認
    ・懸賞・クイズへの応募
    ・カタログ・資料請求
    ・会員制サイトへの登録や入会
    ・イベントの参加申込み,施設の利用申込み
    ・メールによる問い合わせ,照会や意見募集
    ・電子会議室や掲示板
    ・メルマガ等の配信登録
    ・クッキーによるユーザー識別やアクセス情報の収集
    ・その他,何らかの形で個人情報を収集するもの
    (公益社団法人日本広報協会ホームページ)

     個人情報においては,プライバシーポリシーというよりも「個人情報の利用目的」の明示義務が定められており,表示義務はその限りにとどまります。もっとも,当該利用目的はプライバシーポリシー内に記載されていることが通常であることから(プライバシーポリシーの一部を構成),利用目的の表示義務は,そのままプライバシーポリシーの表示義務ということができます。

     以下,引用条文中は「利用目的」との文言が存在しますが,いずれもプライバシーポリシーに置き換えて説明します。

    2 プライバシーポリシーの「公表」義務

     個人情報保護法18条1項においては,

     個人情報取扱事業者は,個人情報を取得した場合は,あらかじめその利用目的を公表している場合を除き,速やかに,その利用目的を,本人に通知し,又は公表しなければならない

    と定められています。

     取得の都度本人に通知又は公表するよりも,あらかじめ公表する方法が実用的ですが,ここでいう「公表」とは,「広く一般に自己の意思を知らせること(国民一般その他不特定多数の人々が知ることができるように発表すること)」とされており,その具体例として,ウェブサイトについては
     
     自社のウェブ画面中のトップページから1回程度の操作で到達できる場所への掲載

    とされています(個人情報の保護に関する法律についての経済産業分野を対象とするガイドライン(平成26年12月12日改正))。これが,様々に存在する各ウェブサイトにおいて,基本的にプライバシーポリシーのリンクがトップページ下に設けられている理由です。

     以上の通りであり,まず一段階目の回答として,プライバシーポリシーをウェブサイト上で「あらかじめ公表」するために,「ウェブ画面中のトップページから1回程度の操作で到達できる場所へ」掲載しなければなりません。

    3 プライバシーポリシーの「明示」義務

     次に,同条第2項(一部抜粋)において,

     個人情報取扱事業者は,前項の規定にかかわらず,本人との間で契約を締結することに伴って契約書その他の書面(電子的方式・・・を含む・・・)に記載された当該本人の個人情報を取得する場合・・・は,あらかじめ,本人に対し,その利用目的を明示しなければならない

    と定められており,上記の場合に「本人に対し」「明示」することが要求されています。ここでいう「明示」とは,「本人に対し,明確に示すこと」とされており,その具体例として

     ネットワーク上においては,本人がアクセスした自社のウェブ画面上,又は本人の端末装置上にその利用目的を明記すること(ネットワーク上において個人情報を取得する場合は,本人が送信ボタン等をクリックする前等にその利用目的(利用目的の内容が示された画面に1回程度の操作でページ遷移するよう設定したリンクやボタンを含む。)が本人の目にとまるようその配置に留意する必要がある。)

    とされています(同ガイドライン)。

     ウェブ上で契約を締結する際,個人に対して利用規約を示すことが通常行われていますが,それと同様に,プライバシーポリシーについても明示しなければならず,その方法も限定されているということです。

     ここで問題なのは「1回程度の操作でページ遷移するよう設定したリンクやボタン」です。
    この「操作」にはスクロール操作やクリック操作も含まれており,クリックした後スクロールする操作は合計2操作になります。

     「1回程度」という言葉の曖昧さはありますが,要は「一つの行動と捉えられる範囲の操作」ということになるため,ダブルクリックや,マウスのスクロールボタン(ホイール)を利用した,ホイールを複数回に分けて回転させて行うスクロール行為等が「1回程度」の定義に該当するでしょう。

     いずれにせよ,例えば送信ボタンの上にプライバシーポリシーのページに遷移するリンクを設けていても,遷移した先のページで実際の利用目的を確認するのにスクロールしなければならないとなると,「明示」に該当しないおそれがあるのです。

     以上の通りであり,二段階目の回答として,ウェブページ上において送信ボタン上部にプライバシーポリシーを記載した窓を設け,利用目的が記載されていることを示したうえでスクロール行為のみで確認できるようにする,又は同部にリンクを設け,遷移先でスクロールなしに利用目的を確認できるようにする,等の形式で,利用目的を「明示」しなければなりません。

     なお,法的規制とは別に,JIS Q 15001:2006「個人情報保護に関するマネジメントシステム-要求事項」の第三者認証制度を利用する場合は,それらの規制をも遵守することになり,さらに厳しい要件が課されることになります。


    田島・寺西・遠藤法律事務所


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  • 2015/08/07 商取引 情報成果物作成委託における下請法上の留意点(著作権の処理含む)(田島・寺西・遠藤法律事務所)

    情報成果物作成委託における下請法上の留意点(著作権の処理を含む)

    Q. 弊社(資本金1000万円)はCM制作会社(資本金1000万円)との間の取引基本契約に基づき,インターネット上の動画広告の作成を繰り返し委託しておりますが,この度増資(500万円のうち2分の1を資本金に組入れ)するにあたり,当該取引が下請法の適用対象となると聞きました。現在既に発注済の分も含め,今後取引を継続するにあたり,留意点としてどのようなことが考えられますか。

    A. 下請法の適用対象となりますので,発注書の交付義務等,一定の規制に服することに留意する必要があります。

    1 下請法の適用対象

     下請代金支払遅延等防止法(下請法 以下,特に示さない場合は下請法を指すものとします)は,独占禁止法の特別法として制定されたものであり,取引が下請法の適用対象となるかどうかは,取引内容並びに作成を委託する親事業者及び下請業者双方の資本金額によって形式的に定められます。

     下請法が適用される取引内容のひとつに,「情報成果物作成委託」があり,その中でもプログラム作成委託に該当するかしないかで,資本金額要件が異なります。
     インターネット上の動画広告の作成委託(以下,「本件作成委託」といいます)は「情報成果物作成委託」の3類型のうちのひとつである「自社で使用する情報成果物を自社で作成している会社が情報成果物の作成の全部又は一部を他の事業者に委託すること」に該当すると考えられ,またプログラム作成委託には該当しないものと考えられるため,①親事業者の資本金額が5000万円超(5000万1円以上)であり,かつ,下請業者の資本金額が5000万円以下(個人を含む)である場合,②親事業者の資本金額が1000万円超5000万円以下であり,かつ,下請業者の資本金額が1000万円以下(個人を含む)である場合に,下請法が適用されることになります(第2条7項及び8項)。

     本件においては,増資前は親事業者である御社及びCM制作会社双方の資本金額が1000万円であり,下請法の適用対象外でしたが,増資後は御社の資本金額が1250万円となることから,上記②の場合に該当し,下請法が適用されます。

    2 下請法が適用される場合の親事業者の義務等 

     下請法が適用される場合,親事業者は下請業者に対し,作成委託に当たって,概要以下の義務を負います。

    ①発注書面の交付(第3条)
    ②発注時における下請代金の支払期日の決定(第2条の2)
    ③取引記録の作成及び保存(第5条)
    ④支払遅延時の遅延利息支払い(第4条の2)

     ①については,親事業者及び下請業者の名称,下請業者の給付内容等,法定記載事項(公正取引委員会規則)を記載する必要があります。なお,発注書とは別に契約書の取交しは義務付けられていません。
     ②については,支払期日はコンテンツの受領後60日以内で,かつできる限り短い期間になるように定める必要があります。
     ③については,取引が完了した場合,給付内容,下請代金額等,取引に関する記録(書類又は電磁的記録)として作成し,2年間保存する必要があります。

    3 増資後に下請法の適用対象となった場合 

     本件では増資後に下請法の適用対象となっていますが,増資前,つまり下請法の適用対象外であったときに既に発注していた分の本件作成委託については,増資後に改めて発注書を作成する必要がないだけでなく,増資後に取引が完了した場合も,取引記録作成及び保存の義務を課せられることはありません。支払期日についても,コンテンツ受領後60日以内との制限を受けません。 

     もっとも,取引基本契約の期間が増資後も継続するとしても,増資後の個別発注については,原則通り下請法の適用があるため,上記した①ないし④の義務を課せられます。 
     なお,発注書の作成にあたり,発注書への記載が法定されている事項について取引基本契約に記載が存在する場合,個別発注書においてその点について繰り返し記載する必要はありません。取引基本契約及び個別発注書全体として,各法定記載事項が記載されていれば要件を満たしていることとなるからです。この場合,個別発注書に対し,取引基本契約が紐づけられている必要があります。

    4 著作権の処理 

     下請業者に原始的に発生する著作権を親事業者に譲渡する場合,作成委託の一内容として,下請業者の親事業者に対する「給付の内容」に含んで譲渡させる方法と,「給付の内容」には含まずに,後日,作成委託とは無関係に著作権の譲渡について別途対価を支払って行う方法があります。前者の場合,著作権の譲渡もまさに「給付の内容」に含まれるものとして発注書面に記載する必要があります。

     その際親事業者は,本来の作成委託料部分及び著作権の譲渡対価を含んだ下請代金の額を下請業者との十分な協議の上で設定して発注する必要があります。なぜなら,そのような協議を行うことなく,著作権の譲渡対価が本来の作成委託料に含まれているとして一方的に定め,その金額が一般的な対価に比べ著しく低かった場合,「買いたたき」に該当するとして下請法に違反する可能性があるからです。 
     「買いたたき」は親事業者の優越的な地位の濫用類型のひとつとして定められているところ,下請代金額を決定するにあたり,①発注した内容と同種又は類似の給付の内容に対して通常支払われる対価に比べて著しく低い額を②不当に定めた場合に該当し,第4条5号が規定する親事業者の禁止事項に該当します。

     著作権の譲渡について下請業者の「給付の内容」に含めておきながらそれに対する対価を考慮せずに下請代金を定めると,本来の作成委託料のみの金額としては問題なくとも,本来の作成委託料及び著作権譲渡料の合計金額としては著しく低いと判断される可能性があるので,注意が必要となるのです。 

     本件においては,委託内容が動画広告であって,制作物について制作したCM制作会社に著作権が発生すると考えられますが,当該著作権の譲渡については取引基本契約において処理方法が予め定められているものと考えられます。当該処理方法として本来の作成委託料に含まれる形で,又はそれとは別に,著作権の譲渡に係る対価が適切に定められていれば,下請法適用後に特段問題となることはないと考えられます。

    5 下請法違反の勧告,公表,罰金等 

     親事業者が下請法に違反し,当該事実が公正取引委員会に把握された場合,違反事実を解消し,原状回復措置,再発防止措置等実施するよう勧告及び公表が行われます。 
     また,上記の発注書面の交付義務,取引記録の作成及び保存義務についての違反は重大違反と考えられているようであり,違反行為者及び会社は50万円以下の罰金に処せられる可能性があります。

    6 その他 

     下請法の適用対象となる取引かどうかは,当該取引内容によって資本金額による形式的要件が異なり,また適用対象となった場合の親事業者の禁止行為も買いたたき以外に複数存在します。 

     下請法の適用対象となることが疑われる取引については,まずは資本金額から形式的に判断し,そのうえで親事業者の禁止行為に該当する取引形態となっていないかどうか速やかに判断する必要があります。 

    田島・寺西・遠藤法律事務所

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  • 2015/06/09 商取引 「メールマガジン配信に関する特定電子法及び特定商取引法の規制」(田島・寺西・遠藤法律事務所)

    メールマガジン配信に関する特定電子法及び特定商取引法の規制

    Q 当社は自社開発商品について店舗販売及び通信販売を行っており,新商品開発や既存商品の割引セールを行うたび,メルマガを配信しています。先日とある異業種交流会に参加した際,他の参加者と名刺を交換しました。名刺記載のメールアドレス宛に,本人の同意を得ずしてメルマガを配信することに問題はありますか?

    A 特定電子メールの送信の適正化等に関する法律,及び特定商取引法の制限を受け,問題となる場合があります。

    1 特定電子メールの送信の適正化等に関する法律(特電法)の改正  

    平成20年に特電法が改正され,「オプトイン方式」が導入されて以降,企業の広告宣伝メール全般の送信については,厳しい制限が課せられることとなりました。  

    具体的には一部例外を除いて,あらかじめ同意した者に対してのみ,広告宣伝メールを送信することができるにとどまることとなります。  

    特電法の規制を受けるメール(特定電子メール)とは,「営利を目的とする団体及び営業を営む場合における個人」である送信者が「自己又は他人の営業につき広告又は宣伝を行うための手段として送信する電子メール」を指します(消費者庁 『特定電子メールの送信等に関するガイドライン』)。  

    ご質問のような新商品開発,もしくは既存商品の割引セールを行うたび配信されているメルマガは,それら商品の広告・宣伝が主として行われていると考えられますので,特定電子メールに該当する可能性が高いと言えます。

    2 オプトイン方式の例外  

    そもそも前提として,特電法第3条1項本文で  
     送信者は,次に掲げる者以外の者に対し,特定電子メールの送信をしてはならないと規定され,

    そして同項1号で,   
     あらかじめ,特定電子メールの送信をするように求める旨又は送信をすることに同意する旨を送信者・・・に対し通知した者 

    と規定されていることで,オプトイン方式が採用されていることが示されています。  

    もっとも,特電法の趣旨は電子メールの送受信上の支障の防止にあるところ,下記の場合にはそのような支障が経験上それほど懸念されないことから,法第3条1項2号から4号において,同意を通知したもの以外の者であっても,その者に宛てて特定電子メールの送信が可能なものが定められています。  

    同項2号   
     前号に掲げるもののほか,総務省令・内閣府令で定めるところにより自己の電子メールアドレスを送信者又は送信委託者に対し通知した者  

    同項3号   
     前二号に掲げるもののほか,当該特定電子メールを手段とする広告又は宣伝に係る営業を営む者と取引関係にある者  

    同項4号   
     前三号に掲げるもののほか,総務省・内閣府令で定めるところにより自己の電子メールアドレスを公表している団体又は個人(個人にあっては,営業を営む者に限る。)

    そのうち上記2号のいわゆる「自己の電子メールアドレスの通知をした者」については,さらに施行規則において,

    第2条1項   
     法第3条1項2号の規定による送信者又は送信委託者に対する自己の電子メールアドレスの通知の方法は,書面により通知する方法とする。ただし,次の各号に掲げる特定電子メールを受信する場合の通知の方法は,任意の方法とする。  

    同項1号   
     第6条各号のいずれかに掲げる場合に該当する特定電子メール  

    同項2号   
     法第3条1項1号の通知の受領のために送信がされる一の特定電子メール

    と規定されています。

    3 書面による通知  

    書面により自己の電子メールアドレスを通知した場合には,書面を提供した側にも,書面の通知を受けた者から電子メールの送信が行われることについての一定の予測可能性があるものと考えられるため(上記ガイドライン),上記のように規定されています。
    そして,「名刺」も書面に該当します。

    したがってご質問の場合については,名刺をくれた方に対して,たとえメルマガを配信することについて具体的に同意を得ずに配信しても,特電法上は問題ないものと考えられます。

    4 特定商取引法(特商法)による規制  

    ところが特商法において,通信販売等の形態で消費者と取引をする場合において,事業者が取引の対象となる商品や役務などについての電子メールによる広告(電子メール広告)を行う場合についての規制が存在します。  

    販売業者等が,電子メール広告に基づき通信手段により申込みを受ける意思が明らかであり,かつ,消費者がその表示により購入の申込みをすることができるものであれば上記規制に服することになります(消費者庁 『改正特定商取引法における「電子メール広告規制(オプトイン規制)」のポイント』)。  

    したがって,ご質問のメルマガが電子メール広告に該当する場合,特商法の規制も考慮しなければなりません。  

    特電法と特商法は,前者の趣旨が「電子メールの送受信上の支障の防止」であるのに対し,後者の趣旨は「消費者保護,取引の公正」であり,また管轄庁が異なることから,その関係性については明らかにされておらず,それぞれ全く別の法的規制として該当性を検討し,要件を満たす必要があります。  

    特商法における電子メール広告に該当すれば,相手(消費者)からあらかじめ請求や承諾を得ていない限り,電子メール広告の送信が原則的に禁止されます(特商法12条の3第1項)。そして,同項における例外は 

    ①特商法施行規則11条の3第2項   
     契約の申込みの受理及び当該申込みの内容,契約の成立及び当該契約の内容,並びに契約の履行に係る事項のうち重要なものの通知に付随して,通信販売電子メール広告をする場合  

    ②同条の4第1号   
     相手方の請求に基づいて,又はその承諾を得て電磁的方法により送信される電磁的記録の一部に掲載することにより広告がなされる場合

    ③同2号
     電磁的方法により送信しようとする電磁的記録の一部に広告を掲載することを条件として利用者に電磁的方法の使用に係る役務を提供する者・・・による当該役務の提供に際して,広告がなされる場合

    とされています。

    ③については,フリーメールアドレスサービスにおいて,利用条件として利用者がそのアドレスからメールを送ると,当該メールに事業者の広告が掲載されることとなるもの等を指します。したがって,残る①,又は②に該当しない限り,上記規制に服することになります。

    ②については,広告宣伝でないメルマガ等の一部に広告を掲載する場合を指し,ただし,消費者が上記メルマガ配信の請求や承諾をしたものにとどまり,広告宣伝を主目的とするメルマガの配信について請求や承諾をしていない場合は適用除外になりません(上記ポイント)。また「一部に掲載」にとどまるか否かは,メルマガ全体を見て主副の関係が逆転していないか,という観点から判断されるようです。  

    したがって,仮にご質問のメルマガが電子メール広告に該当する場合,「電子メール広告を送ること」についてあらかじめ請求や承諾を得ておかなければならず,さらに,原則としてその請求又は承諾を得た記録を,書面又は電子データの形式で保存する義務が課せられることになります(特商法12条の3第3項)。

    5 結論  

    以上の通り,ご質問のメルマガが,主に開発した新商品又は割引セールを実施している既存商品の広告・宣伝を目的としている場合,名刺を取得したことで特電法による規制は受けずとも,電子メール広告に該当する可能性があり,特商法の規制を受ける可能性が高い以上は,あらかじめ本件メルマガの配信に関する請求又は承諾を得る必要があるでしょう。

    田島・寺西・遠藤法律事務所

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  • 2014/04/25 商取引 『国際物品売買に関するウィーン売買条約』(田島正広弁護士)

    国際物品売買に関するウィーン売買条約

    Q 当社では国際的に動産売買を行うことになりましたが,ウィーン売買条約が適用されるのはどのような場合でしょうか?

    A 相手の所在国次第で同条約が自律的に適用されますが,当事者間の合意でその適用を排斥した場合にはこの限りではありません。

    近時は経済のグローバル化に従い,資材や中間製品の輸入による調達や最終製品の輸出による販売の機会も増大しており,国内企業が当然に国際契約に携わる時代になっています。

    この場面を議論するに当たって,忘れてはならないのがウィーン売買条約です。

    この条約は正式には,「国際物品売買契約に関する国際連合条約」(United Nations Convention on Contracts for the International Sale of Goods : CISG)といい,我が国については,既に平成21年8月1日発効しています。

    その趣旨は,国際的な物品売買契約について適用される各国に共通の契約法を定めることによって,国際取引を円滑化し貿易の発展を促進することにあります。

    昭和55年(1980年)ウィーンで採択され,昭和63年(1988年)には発効していた条約に,我が国が71番目の加盟国として加盟したものです。

    この条約を施行するための国内立法措置は採られず,本条約が日本の裁判所において直接適用されています。

    以下に,その特徴を概観します(以下,法務省民事局参事官曽野裕夫他「ウィーン売買条約(CISG)の解説(1)ないし(5)(NBL No.887ないし895号)を参照)。

    ① 適用対象となる契約
    国際物品売買契約,すなわち売主が物品を引き渡して所有権を移転し,買主が代金を支払う契約です。物品とは有体物を念頭に置いています。
    製作物供給契約でも原料の供給による売買を伴う場合はこれに含まれる一方,主要な部分が役務提供からなる契約は含まれません。

    ②自律的適用
    当事者の営業所がそれぞれ異なる締約国に所在するときには,国際私法を介することなく自律的に適用されます。
    当事者の一方又は双方が締約国に営業所を有しない場合でも,法廷地の国際私法の準則((ex)当事者の合意による準拠法指定)によれば締約国の法が適用される場合には,本条約が適用されます。

    ③適用排除
    当事者は,合意によって本条約の適用を排除でき,この場合は,法廷地の国際私法の準則によって準拠法が指定されることになります。

    ④方式の自由
    契約は,当事者間の合意(口頭を含む)によって成立し,書面による必要はありません。

    ⑤契約の成立
    契約は,申込とこれに対する承諾によって成立します。
    契約の成立時期は承諾通知の到達時であり,申込に変更を加えた承諾も,その変更が実質的でないときには有効な承諾とされます。

    ⑥過失責任主義の否定と契約解除の制限
    過失責任主義は否定され,当事者が合意した契約による拘束力を重視します。重大な契約違反が存在する場合にのみ契約解除及び代替品引渡請求が許され,相手方がその契約に基づいて期待することができたものを実質的に奪うような不利益を相手方に生じさせる場合が,これに該当するとされます。

    ⑦引渡
    売主の義務としての引渡の方法は,最初の運送人への交付(運送を伴う場合),又は売主の営業所での引渡(運送を伴わない場合)とされます。運送及び保険を手配する義務を負うのは原則として買主であり(FOB的発想です),売主は運送契約締結義務も貨物海上保険締結義務も負いません。ただし,売主には,これらに必要な情報を提供する義務はあります。

    ⑧買主の物品検査及び不適合品通知義務
    買主は,物品受取後可能な限り短期間内に物品を検査しなければならず,物品の不適合を発見し,又は発見すべき時から合理的な期間内に売主に対して不適合の性質を特定した通知を行わなければなりません。
    この通知を怠ると,買主は,物品の不適合を援用する権利を失います。

    ⑨第三者の権利
    売主は,第三者の権利又は請求の対象となっていない物品を引き渡す義務を負います。
     請求は正当な権利に基づくものに限られないとされるため,紛争の対象となっている物品は基本的に引渡の対象外とされることになります。
    知的財産権に関しては特例があります。

    ⑩危険負担
    危険移転時期は,原則的には運送人への交付時(運送を伴う場合)や買主が受け取った時(運送を伴わない場合)とされますが,例外もあるため,必ずしも引渡時と一致はしていません。
    危険移転前の滅失・毀損については,売主は,物品を再調達・補修して契約に適合した物品を買主に引き渡す義務を負います。
    他方,危険移転後は,買主は代金支払義務を免れませんが,その滅失・毀損が売主の作為又は不作為による場合(債務不履行によることは求められていません)は危険移転の効果が生じません。

    ⑪損害賠償額
    損害賠償額は,契約違反により相手方が被った損失に等しい金額とされますが,その範囲は,契約違反を行った当事者が契約違反から生じうる結果として契約締結時に予見可能であった損失によって画されています
    。当事者双方に損害を軽減するための合理的措置が求められ,その違反に際しては損害賠償額の減額請求が可能です。

    ここに概観したところによっても,ウィーン条約は我が国の国内法制度と相当程度異質なものと評されるところであり,現場においても未だになじみにくいところがあるように思われます。

    今後,債権法の国際化を重要な動機としたその改正作業も視野に入れつつ,この条約の受け止められ方も変わっていくところがあると思いますが,現段階では従来型の準拠法指定による同条約の排斥がむしろ多く見られるところであり,今後の実務の動向が注目される所以です。

    以上を踏まえ,設問の回答としては,上記②及び③に従い,同条約適用排除の合意があればそれが優先することになり,この場合は契約の準拠法として別途準拠法指定の合意が必要となります。


    田島・寺西法律事務所
    弁護士 田島 正広


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  • 2014/02/07 商取引 『食品表示における景品表示法上の留意点』(田島・寺西・遠藤法律事務所)

    食品表示における景品表示法上の留意点

    Q 当社は食品製造業者ですが,昨今問題となっている食品表示に関して,どのような点に気を付けたらよいでしょうか。

    A 食品表示等商品の品質や価格についての情報は,消費者が選択する際の重要な判断材料になりますので,それらが実際よりも著しく優良又は有利であると見せかける表示が行われると,消費者の適正な判断を妨げることになります。そのような表示を防ぐため,不当景品類及び不当表示防止法(以下,「景品表示法」という)では,消費者に誤認される不当な表示が禁止されています。

    そのため,表示をする際,景品表示法で禁止されている「不当な表示」とならないように注意する必要があります。

    景品表示法において規定されている「不当な表示」とは,
    ①優良誤認表示(法4条1項1号)
    ②有利誤認表示(法4条1項2号)
    ③商品・サービスの取引に関する事項について一般消費者に誤認されるおそれがあると認められ内閣総理大臣が指定する表示(法4条1項3号)
    の3つの表示です。

    ①優良誤認表示とは,商品・サービスの品質,規格その他の内容についての不当表示であり,ⅰ)内容について,実際のものよりも著しく優良であると一般消費者に示す表示,ⅱ)内容について,事実に相違して競争事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示であって,不当に顧客を誘引し,一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められる表示を指します。

    例としては,国産有名ブランド牛の肉であるかのように表示して販売していたが,実はブランド牛ではなかった場合等が挙げられます。

    ②有利誤認表示とは,商品・サービスの価格その他の取引条件についての不当表示であり,ⅰ)取引条件について,実際のものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示,ⅱ)取引条件について,競争事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示であって,不当に顧客を誘引し,一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められる表示を指します。

    例としては,「今なら半額!」と表示していたが,実際は常にその金額であった場合などが挙げられます。

    ③法4条1項3号に基づき現在指定されている表示は以下の6つの表示です。

    これらについては,別途不当な表示になる場合が規定されています。

       
    • ・無果汁の清涼飲料水等についての表示
      (昭和48年3月20日公正取引委員会告示第4号)
    •  
    • ・商品の原産国に関する不当な表示
      (昭和48年10月16日公正取引委員会告示第34号)
    •  
    • ・消費者信用の融資費用に関する不当な表示
      (昭和55年4月12日公正取引委員会告示第13号)
    •  
    • ・不動産のおとり広告に関する表示
      (昭和55年4月12日公正取引委員会告示第14号)
    •  
    • ・おとり広告に関する表示
      (平成5年4月28日公正取引委員会告示第17号)
    •  
    • ・有料老人ホームに関する不当な表示
        (平成16年4月2日公正取引委員会告示第3号)
    • →変更 平成17年6月29日公正取引委員会告示第12号
      平成18年3月3日公正取引委員会告示第4号
      平成18年11月1日公正取引委員会告示第35号

    上記①~③のいずれかに該当するような不当な表示がなされている場合,当該行為を行っている事業者に対し,不当表示により一般消費者に与えた誤認の排除,再発防止策の実施,今後同様の違反行為を行わないこと等を命ずる「措置命令」が出されます(法6条)。
    そして,当該命令に違反した場合,罰則があります(法15条)。

    なお,昨年問題となったホテルにおける食品表示の偽装に関しても,上記①優良誤認表示,上記③のおとり表示として,措置命令が出されました。
    (消費者庁HP http://www.caa.go.jp/representation/pdf/131219premiums_1.pdf)


    田島・寺西・遠藤法律事務所


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