コラム「企業法務相談室」一覧

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  • 2017/08/09 知的財産 インターネット上にあるイラストの使用上の問題点(田島・寺西・遠藤法律事務所)

    インターネット上にあるイラストの使用上の問題点

    Q 当社部署内のプレゼン用資料にイラストを挿し入れたいのですが,インターネットで「イラスト 無料」と検索してヒットしたものであれば自由に使えるでしょうか。


    A 著作権侵害に該当し,後日イラスト使用料を請求される可能性があります。


    1 問題の所在

     今日,インターネットで検索すれば,様々なイラストが表示されます。 会社の広告宣伝用のチラシ,プレゼン用資料,ホームページやSNS等,イラストを挿し入れたい場合に,インターネット上で見つけたイラストを使えれば便利でしょう。しかし,その際,そのイラストの使用行為が第三者の著作権を侵害しないか,注意する必要があります。

     イラストと一口に言っても様々で,有名な漫画の登場人物のイラストやCGを駆使して緻密に描かれたイラスト等,誰もが著作権を侵害するかもしれないと思うに至り,自由に使用することに抵抗感を覚えるものから,シンプルな風景画や人物のシルエット画等,何らか価値があるとはおよそ考えにくいものまであります。実際,インターネット上においては特に後者のようなイラストについて,深く考えずに(おそらく著作権者に無断で)使用していると思われる例が散見されます。

     しかし,どのようなイラストについても,それを無断で使用することは,著作権侵害に該当する可能性があるのです。
     現に「有料イラスト 無断使用 ニュース」で検索すれば,行政が有料イラストを無断で使用したとのニュースが散見されるほどです(高知県による無断使用(産経ニュース))や,岡山市による無断使用(山陽新聞digital)等)。

     では,どのような場合に,イラストを自由に使用できるのでしょうか(なお,ここでいう「自由に」とは,著作者ないしは著作権者の個別の許諾を得なくとも,という意味で用いています(以下同じ))。


    2 著作物該当性


     大前提として,著作権は著作物について発生するので,使用したいイラストが著作物に該当しないのであれば,著作権を侵害することもありません。
     著作物とは「思想又は感情を創作的に表現したものであって,文芸,学術,美術又は音楽に属するものをいう」(著作権法第2条1項1号)と定義されています。このうち「思想又は感情が表現されているか」そして「創作的か(他者の表現と異なるか)」という点が,著作物性を判断するカギといえます。
     しかし,「思想又は感情が表現されているか」又は「創作的か」の判断は難しく,また著作権は特許権・商標権と異なり,登録して初めて権利が生じるのではなく,著作物を創作した時点でいわば自然発生します。したがって,そのイラストが著作物に該当するか否か判断できる一見して明らかなメルクマールは存在しません。
     イラストに関していえば,どれだけシンプルなものであっても,あえてシンプルにした点が創作的であるといえることもあり,原則として著作物として扱った方がリスク回避という観点からは望ましいでしょう。仮に創作的であるか疑わしく,著作物性が疑わしいものについても,著作物だといわれてしまえば,最終的には訴訟等で明らかにするほかありません。
     以上のとおりであるので,イラストを使用したいと考えたときに,それが著作物に該当するかを考えるよりも,そのイラストが自由に使えるかどうかを見極める必要があります。


    3 著作権者の許諾


     イラストが自由に使えるものかどうかは,著作者ないしは著作権者(著作者と著作権者が異なる場合もありますが,以下では便宜上著作権者で統一します)が,その自由な使用を許諾しているかによります。
     もちろん,著作権法上,許諾がなければあらゆる用途の使用ができないとされているわけではなく,一定の場合には例外的に,著作権者の意思にかかわらず使用が認められています。例えば「私的使用のための複製」です。
     複製とは「印刷,写真,複写,録音,録画その他の方法により有形的に再製すること」を指し(法第2条1項15号),私的使用であれば,インターネット上のイラストを何枚プリントアウトしても良いことになります。
     しかし「私的使用」は「個人的に又は家庭内」で使用する場合等,ごく限られた範囲でしか認められません(法第30条)。したがって,社内において,少人数部署内でのプレゼン用資料にイラストを挿し入れて印刷する行為も「私的使用のための複製」とはいえず複製権侵害となります(法第21条。なお配布すれば頒布権の侵害にもなります(法第26条))。
     現実問題としてそれが表面化しないのは,単に,事実が明るみに出ず,又は出たとしても目くじらを立てる程のことではないことが通常だからです。もっとも後述するように,事後的な高額請求事案も散見されます。
     以上のとおり,会社の業務上イラストを使おうとする場合,「私的使用のための複製」のような著作権法上の例外に該当して自由な使用が認められる,という場合は少ないと思われます。そうであるからこそ,著作権者が,その自由な使用を許諾しているかが重要になります。


    4 インターネットでイラストを探す場合の注意点


     検索エンジンを利用して自由に使える無料のイラストを検索する場合,検索したいキーワードを打ち込み,検索結果のうちの画像のみを表示させ,いわゆるサムネイルの状態で各画像を吟味する,という過程を経ることになると思われますが,各画像それぞれに,その画像が保存・保管されているサイトに飛べるリンクが付されています。少なくともそのリンク先に飛び,当該イラストが自由に使用できるものとされているか(また無料であるか)を確認することが重要です。
     サイトの中には,冒頭で「本サイト内のイラストは無償で自由にご利用頂けます」などと謳っているものや「本サイト内のイラストは全て著作権フリーです」と記載されているものもあります。しかし,その文言だけで判断できない場合も多いことから,その趣旨について注意深く読み込み,著作権者が誰であるかを示す識別情報や権利関係が明確で,真に自由な使用が許諾されているかを確認する必要があります。
     サイトによっては,上記の識別情報や権利関係が不明確なものも存在するでしょうが,そうしたイラストについては使用を控えるべきです。有料イラストの無断使用に関して損害賠償が求められた裁判例(東京地判平成27年4月15日)においても「フリーサイトから入手したものだとしても,識別情報や権利関係の不明な著作物の利用を控えるべきことは,著作権等を侵害する可能性がある以上当然」と判示されています(以下「平成27年東京地裁判決」といいます)。

     なお,注意が必要なのは,インターネット上で「無料」と謳われているイラストです。
     インターネット上の有料のイラストに関しては,そもそも著作権者の許諾がないと使用できない場合が多く(イラスト上に「SAMPLE」の透かし文字が表示されるなどして,文字の入っていない高画質のイラストは料金を支払わないと入手できない等),そういった場合は通常,料金の支払と共に個別の著作物使用許諾もなされるので問題になりません(もちろん「SAMPLE」の文字入りの低画質のイラストについても,自由な使用が許諾されていないことが多いでしょう)。
     一方,無料のイラストは,使おうと思えばダウンロードして自由に使えることが多いですが,その使用に対価が発生しないにとどまり,それがそのまま自由に使えることを意味するわけではありません。
     検索エンジンで「イラスト 無料」と検索した経験のある方は少なくないと思われますが,そもそも無料であることと,自由に使えることは同義ではないのです。無料であっても,その使用又は使用方法が限定されている場合があります。したがって,たとえ無料であって自由にダウンロードできるとしても,自由に使えるかどうか上記の識別情報や権利関係を確認する必要があります。


    5 クリエイティブ・コモンズ・ライセンス

     最近は,クリエイティブ・コモンズ・ジャパン(CCJP)(活動母体:特定非営利活動法人 コモンスフィア)の普及する,クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CCライセンス)を導入するサイトもあります。
     ここでは「法律や技術に関する専門的な知識がなくても,自分の希望する条件を組み合わせることで,自分の作品をインターネットを通じて世界に発信することができる画期的なライセンスシステム」が創設されており(クリエイティブ・コモンズ・ジャパンホームページ FAQ よくある質問と回答),複数のアイコンを組み合わせた表示を著作物と共に示すことで,その著作物の使用にどのような制限がかかっているかを容易に知り得る仕組みが設けられています。この仕組みを利用しているサイトでは,そのサイト内に存在するイラストをどのように使うことが許諾されているか,各イラストに明示されているので,非常にわかりやすくなっています。


    6 悪意を持った者が存在する可能性

     著作権者の権利と,著作物を利用したい者の要望は対立することも多く,インターネットを通じて発表した著作物が,使用を一切許諾していないにもかかわらず第三者に無断転用される等,保護されて然るべき権利が保護されていない事例も多く存在します。
    これに対しては,どのようなイラストでも著作物として保護されるべきであり,著作権者保護の観点からして,その使用に正当な対価が支払われるべきとの高いコピーライトリテラシーの下,イラストを著作物として扱うことを明示したうえで,その使用を有料とするサイトも見られます。

     一方で,一般消費者又は企業の知識不足につけ込み,無料で自由に使えると誤信してイラスト等を使用した者に対して,一定期間経過後,当該期間中の使用の対価を請求するような悪意を感じさせる事例も散見されます。「「イラスト 無料」と検索して見つけたから,自由に使えると思っていた,無料だと思っていた」と反論しても,元のサイトに飛べば有料であることは明らかであり,その確認という簡単なステップさえ怠った点に落ち度がある,との再反論の前に沈黙を余儀なくされることもあるでしょう。
     検索エンジン上においても「画像は著作権で保護されている場合があります」との注意が記載されているので,最終的に不法行為における故意又は過失が立証されてしまう可能性が高いと思われます。平成27年東京地裁判決においては,著作権侵害行為の主体者の「経歴及び立場に照らせば」との前提で,著作権侵害の未必の故意(積極的ではなくとも,結果の発生をやむを得ないものとして認識し,認容する故意)まで認められてしまっています。

     イラスト使用料については,その高さに驚くような例もあり得るところですが,平成27年東京地裁判決において,原告の設定していたそもそものイラスト使用料を損害賠償金額の算出根拠とするには高すぎる,と被告が争った点に関し「利用者がこれらのコンテンツを購入,ダウンロードできる本件サービスを提供するなど,相当な市場開発努力をしているばかりか,当該市場において相当程度の信頼を勝ち取っていることが認められるのであり,また,その使用料金が当該市場において特に高額なものとも認められない」と判示され,被告の反論が退けられています。したがって,高額と感じたとしても,その使用料が損害賠償金額の算出根拠とされる可能性があります。

     厄介なことに「イラスト 無料」のように検索しても,有料のイラストがヒットする可能性はあります(検索エンジンにその責任を問うことは検索エンジンの性質上難しいでしょう)。上記のような事後的な高額請求を避けるためには,インターネット上のイラストを使用する際は,十分に注意する必要があります。


    田島・寺西・遠藤法律事務所


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  • 2015/09/14 知的財産 ビッグデータの利活用を視野に入れた個人情報保護法改正(田島正広弁護士)

    ビッグデータの利活用を視野に入れた個人情報保護法改正

    Q ビッグデータの利活用の観点から,個人情報保護法が改正されると聞きました。改正の概要を教えて下さい。



    A 個人情報の定義の明確化,要配慮個人情報のに関する規制,匿名加工情報に関する取扱いの定め,トレーサビリティの確保,個人情報保護委員会の新設,国境を超えた適用等が挙げられます。


    1 ビッグデータの利活用の必要性と個人情報保護のあり方

     ビッグデータの利活用が企業活動における重要な課題とされる今日,プライバシーに関わる個人の権利利益が不当に侵害されないよう,ビッグデータの利活用を推進するためのルール作りが各国における重要課題となっています。この点,我が国においても,法制度上個人情報として取り扱うべき範囲が曖昧なことから,JR  東日本のSUICAに関するデータ提供事案を初めとして,企業側でもビッグデータの商業利用の推進に躊躇しており,一方,自らの個人データを匿名化して提供される国民の側でも,情報の匿名化の程度,復元可能性等について不安感を募らせるところとなっていました。そこで,この点を明確にしたのが,今回の個人情報保護法改正案です。現在,衆議院での審議中であり,間もなく成立見込です。以下にその重要なポイントを指摘します。

    2 個人情報の定義の明確化

    (1) 個人情報の定義の明確化

     改正法においては,個人情報は,生存する個人に関する情報であって,次の各号のいずれかに該当するものをいうものとされます(改正法2条1項)。すなわち,

    ① 生存する個人に関する情報であって,当該情報に含まれる氏名,生年月日その他の記述等(文書,図面若しくは電磁的記録に記載され,若しくは記録され,又は音声,動作その他の方法を用いて表された一切の事項(個人識別符号を除く。)をいう。以下同じ。)により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と容易に照合することができ,それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)

    ② 個人識別符号が含まれるもの

      ここで,個人識別符号とは,次の各号のいずれかに該当する文字,番号,記号その他の符号のうち,政令で定めるものをいうものとされます(同条2項)。

    ① 特定の個人の身体の一部の特徴を電子計算機の用に供するために変換した文字,番号,記号その他の符号であって,当該特定の個人を識別することができるもの

    ② 個人に提供される役務の利用若しくは個人に販売される商品の購入に関し割り当てられ,又は個人に発行されるカードその他の書類に記載され,若しくは電磁的方式により記録された文字,番号,記号その他の符号であって,その利用者若しくは購入者又は発行を受ける者ごとに異なるものとなるように割り当てられ,又は記載され,若しくは記録されることにより,特定の利用者若しくは購入者又は発行を受ける者を識別することができるもの
     
    (2) 要配慮個人情報の定義と新たな規制

     改正法2条3項は,「本人の人種,信条,社会的身分,病歴,犯罪の経歴,犯罪により害を被った事実その他本人に対する不当な差別,偏見その他の不利益が生じないようにその取扱いに特に配慮を要するものとして政令で定める記述等が含まれる個人情報」をもって要配慮個人情報と定義しています。

     その上で,法令に基づく場合,又は人の生命,身体,財産の保護に必要な場合,公衆衛生の向上等のため特に必要な場合,若しくは国の機関等の事務に協力すべき場合で本人の同意が得られない場合の他,本人,国の機関,地方公共団体等,その他個人情報保護委員会規則で定める者により公開されている場合等の例外を除いては,あらかじめ本人の同意を得ないで,要配慮個人情報を取得してはならないものとされます(同法17条2項)。

     また,オプトインが原則である第三者提供の例外として,オプトアウトを認める法23条2項により提供可能な個人データからは,定義上要配慮個人情報が除外されており,オプトアウトに依拠する名簿屋での第三者提供は一切許されません。

    3 適切な規律の下での個人情報等の有用性確保

    (1) 匿名加工情報に関する加工方法,取扱い等の規定の整備

     改正法では個人情報を匿名化して利活用を進めるため,その加工方法や取扱いが整備されました。

     すなわち,まず匿名化された情報の定義として,「匿名加工情報」とは,次の各号に掲げる個人情報の区分に応じて,当該各号に定める措置を講じて特定の個人を識別することができないように個人情報を加工して得られる個人に関する情報であって,当該個人情報を復元することができないようにしたものをいうものとされます(改正法2条9項)。

    ① 法2条1項1号に該当する個人情報 

      当該個人情報に含まれる記述等の一部を削除すること(当該一部の記述等を復元することのできる規則性を有しない方法により他の記述等に置き換えることを含みます。)

    ② 法2条1項2号に該当する個人情報(個人識別符号) 

      当該個人情報に含まれる個人識別符号の全部を削除すること(当該個人識別符号を復元することのできる規則性を有しない方法により他の記述等に置き換えることを含みます。)

     そして,個人情報取扱事業者が匿名加工情報データベース等を構成する匿名加工情報を作成するときは,特定の個人を識別すること及びその作成に用いる個人情報を復元することができないようにするために必要なものとして個人情報保護委員会規則で定める基準に従い,当該個人情報を加工しなければならないものとして(改正法36条1項),匿名加工の際の個人識別性及び復元性排除の基準を定めています。

     さらに,匿名加工情報を作成した個人情報取扱事業者は,その作成に用いた個人情報から削除した記述等及び個人識別符号並びに前号の規定により行った加工の方法に関する情報の漏えいを防止するために必要なものとして個人情報保護委員会規則で定める基準に従い,これらの情報の安全管理のための措置を講じなければならないものとされます(同条2項)。
    この他,当該個人情報取扱事業者は,個人情報保護委員会規則で定める公表義務等が課せられる他(同条3項,4項),当該個人情報取扱事業者が個人を識別するために,当該匿名加工情報を他の情報と照合してはならないものとされます(同条5項)。

    (2) 個人情報保護指針の作成,届出,公表等の規定の整備

     従前より対象事業者の個人情報の適正な取扱いのために認定個人情報保護団体による個人情報保護指針の作成,公表の努力義務が定められていましたが,改正法ではその対象を事業者の個人情報及び匿名加工情報に拡大すると共に,対象事業者に対する一定の措置を同団体の義務としました(改正法53条1項ないし4項)。

    4 個人情報保護の強化

    (1) トレーサビリティの確保

     オプトアウトの機会を実効化するためには,自らの個人データの第三者提供のルートを事後的に辿るためのトレーサビリティの保障が必要となります。このことは,個人情報の不正取得,漏えいの状況を明らかにするためにも必要であり,同時にこれらに対する抑止力としても機能することが期待されます。

     そこで,個人情報取扱事業者は,個人データを第三者(法2条5項各号に掲げる者(行政機関等)を除くものとされ,これらに提供した場合は作成義務は課されません。)に提供したときは,個人情報保護委員会規則で定めるところにより,当該個人データを提供した年月日,当該第三者の氏名又は名称その他の個人情報保護委員会規則で定める事項に関する記録を作成しなければならないものとされます(改正法25条1項)。

     ここで,法23条1項各号又は5項各号の場合は除外されていますが,外国にある第三者への提供の場合は同1項各号のみが除外されていることから,同等性認定を受けていない外国にあるクラウド事業者に個人データを提供して管理させる行為が同法上の委託と見られる場合,事業者には上記記録作成義務が課せられることになります。

     また,個人情報取扱事業者が,第三者から個人データの提供を受けるに際しては,個人情報保護委員会規則の定めるところにより,

    ① 当該第三者の氏名又は名称及び住所,並びに法人の場合は代表者の氏名

    ② 当該第三者による当該個人データの取得経緯

    を確認した上,当該データ提供の年月日,確認にかかる事項等に関する記録を作成し,同規則で定める期間保存しなければなりません(改正法26条1項,3項,4項)。当該第三者は上記確認に対する虚偽告知が禁止されています(同条2項)。

    (2) データベース提供罪の新設

     個人情報の漏えい行為を直接処罰の対象として個人情報保護を強化し,不正行為への抑止力を高める趣旨で,法83条が新設されました。ここでは,個人情報データベース等を取り扱う事務に従事する者又は従事していた者が,不正な利益を図る目的でそれを提供又は盗用する行為が処罰されます。罰則としては,1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられます。

    5 個人情報保護委員会の新設及びその権限

     本法制定時点で既に,個人情報取扱事業者に対する監督を適正かつ実効的な規制の実現という観点から,特定の省庁から独立した統一的な第三者機関の権限に委ねるべきとの意見がありました。この点,いわゆるマイナンバー法制定に当たり,特定個人情報の機微性,不正なデータマッチングによる重大なプライバシー侵害の危険等に照らして,独立した第三者機関として特定個人情報保護委員会が設立され,運用が開始されています。

     そこで,この度本法改正に当たり,内閣府設置法49条3項により内閣府の外局として,特定個人情報保護委員会を改組して個人情報保護委員会を設立し(改正法59条),現行の主務大臣の有する権限を集約すると共に,立入検査の権限等を追加して(同法40条1項),個人情報取扱事業者等に対する,より適正かつ実効的な規制が図られることになりました。

    6 個人情報の取扱いのグローバル化

    (1) 国境を越えた適用と外国執行当局への情報提供

     個人情報を利用するビジネスのグローバル化に対応して,個人の権利利益の適正な保護と利活用の調和を実現するために,改正法は,日本国内の個人情報を事業上取得した外国の個人情報取扱事業者に対しても個人情報保護法を原則適用することとしました。すなわち,この場合,改正法15条,16条,18条(2項を除く),19条から25条まで,27条から36条まで,41条,42条1項,43条及び76条の規定が適用されます(同法75条)。
      
    (2) 外国にある第三者への個人データの提供に関する規定の整備

     提供先第三者が外国の事業者の場合にも従前より法23条が適用されていますが,国内事業者の場合に比して自己情報のコントロールがより難しいことが想定されるため,改正法は企業活動のグローバル化を踏まえつつも本人の権利利益保護の観点に照らして,同条にはよらずに,原則として本人の同意を要求することとしました(改正法24条)。

     ただし,次の場合には法24条は適用されないものとされています(同条)。

    ① 提供先の外国が,個人の権利利益を保護する上で我が国と同等の水準にあると認められる個人情報の保護に関する制度を有している外国として個人情報保護委員会規則で定めるものである場合。

    ② 提供先の第三者が,個人データの取扱いについてこの節の規定により個人情報取扱事業者が講ずべきこととされている措置に相当する措置を継続的に講ずるために必要なものとして個人情報保護委員会規則で定める基準に適合する体制を整備している者である場合。

    7 その他の改正事項

    (1) 個人情報取扱事業者の除外規定の削除

     6月以内に取り扱う個人情報の件数が5000件を超えない事業者は,法2条5項によって個人情報取扱事業者から除外されていますが,これでは個人情報保護が十分ではなく,EUからの十分性認定を受けられない一因ともなっているとの指摘もあることから,改正法では同項が削除されました。

    (2) 利用目的を変更可能とする規定の整備

     事業者側において機動的な目的変更を可能にするために「相当の」という限定文言を削除することとなりました(改正法15条2項)。変更可能な範囲は,本人が通常予期し得る限度内と立法者に解されています。

    (3) 利用の必要性がなくなった場合の個人データ消去義務

     従前より,個人情報取扱事業者が利用する必要性のなくなった個人データを取り扱うことは,利用目的達成に必要な範囲を超えており目的外利用であるとの指摘がありましたが,改正法では,係る場合には事業者は,当該個人データを遅滞なく消去するよう努めなければならないものとされ,消去の方向性が示されました(改正法19条)。

    (4) オプトアウト規定の厳格化

     不正取得した大量の個人データが名簿屋を通じて広範に提供される事案が生じていることから,改正法ではオプトアウトのための要件を厳格化しました(改正法23条2項)。

    (5) 保有個人データの開示請求権等と事前請求

     改正法は,保有個人データの開示請求等の上記各請求が裁判上請求可能な本人の請求権であることを明示すると共に(改正法28条1項,29条1項,30条1項),訴え提起に当たっては,被告となるべき事業者に対し,あらかじめ裁判外で当該請求を行い,その到達から2週間を経過した後でなければ,訴えを提起できないものとしました(改正法34条1項)。

    (6) 苦情処理及びあっせん

     改正法においては,個人情報保護委員会の任務として,個人情報及び匿名加工情報の取扱いに関する監督並びに苦情の申出についての必要なあっせん及びその処理を行う事業者への協力に関することが挙げられており(改正法61条2号),同委員会が国民生活センター等と並行して苦情処理等に当たることになります。

    弁護士 田島 正広

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  • 2014/06/06 知的財産 「特許権実施の際の事業活動分野の制限と不公正な取引方法の該当性」(田島正広弁護士)

    特許権実施の際の事業活動分野の制限と不公正な取引方法の該当性

    Q 業界で多くの企業がライセンスを受けているある特許の通常実施権の設定を受けるため交渉中ですが,先方提案としては事業活動を行う分野を厳しく制限しており,実質的に当社の製品製造のために当該特許を実施することが困難となっています。このような条件は適法なのでしょうか。

    A 当該事業分野の制限が,広く実施されている特許について差別的な取引拒絶と見うる程度に至っておれば,不公正な取引方法として独占禁止法上問題とする余地があります。

    独占禁止法の目的は,私的独占,不当な取引制限及び不公正な取引方法を禁止し,公正かつ自由な競争を促進することにより,一般消費者の利益確保と国民経済の民主的で健全な発達を促進することにあります。これと,発明の保護・実施許諾による利活用による産業育成を図る特許法との関係が問われることになります。

    この点,独占禁止法第21条は,「この法律の規定は,著作権法,特許法,実用新案法,意匠法又は商標法による権利の行使と認められる行為にはこれを適用しない。」としています。
    公正取引委員会の「知的財産の利用に関する独占禁止法上の指針」(平成19年9月28日制定,平成22年1月1日改正,以下「知財指針」という)によれば,同条の趣旨としては,「技術に権利を有する者が,他の者にその技術を利用させないようにする行為及び利用できる範囲を限定する行為は,外形上,権利の行使とみられるが,これらの行為についても,実質的に権利の行使とは評価できない場合は,同じく独占禁止法の規定が適用される。すなわち,これら権利の行使とみられる行為であっても,行為の目的,態様,競争に与える影響の大きさも勘案した上で,事業者に創意工夫を発揮させ,技術の活用を図るという,知的財産制度の趣旨を逸脱し,又は同制度の目的に反すると認められる場合は,上記第21条に規定される「権利の行使と認められる行為」とは評価できず,独占禁止法が適用される。」としています。すなわち,「権利の行使」に該当するかどうかは,形式的外形的判断によるのではなく,多分に規範的評価を伴う実質判断によることになるのです。

    そして,「ライセンサーがライセンシーに対し,当該技術を利用して事業活動を行うことができる分野(特定の商品の製造等)を制限すること」が独占禁止法の制限する不公正な取引方法に該当するかについては,「原則として不公正な取引方法に該当しない」(知財指針第4-3)とされているものの,次のような場合には例外的に不公正な取引方法に該当するとされます(同指針第4-2)。

    ① 自己の競争者がある技術のライセンスを受けて事業活動を行っていること及び他の技術では代替困難であることを知って,当該技術に係る権利を権利者から取得した上で,当該技術のライセンスを拒絶し当該技術を使わせないようにする行為。

    ② ある技術に権利を有する者が,他の事業者に対して,ライセンスをする際の条件を偽るなどの不当な手段によって,事業活動で自らの技術を用いさせるとともに,当該事業者が,他の技術に切り替えることが困難になった後に,当該技術のライセンスを拒絶することにより当該技術を使わせないようにする行為。

    ③ ある技術が,一定の製品市場における事業活動の基盤を提供しており,当該技術に権利を有する者からライセンスを受けて,多数の事業者が当該製品市場で事業活動を行っている場合に,これらの事業者の一部に対して,合理的な理由なく,差別的にライセンスを拒絶する行為。

    本件では,③に該当する段階に至っておれば,不公正な取引方法に該当することになります。

    田島・寺西法律事務所
    弁護士 田島正広


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  • 2014/05/09 知的財産 「IT・システム開発関連紛争における紛争予防のポイント」(田島正広弁護士)

    IT・システム開発関連紛争における紛争予防のポイント

    IT・システム開発関連紛争を概観して,これを上手に避けるための紛争予防のポイントについて考えてみたいと思います。

    IT関連紛争と一言で言っても,広範囲の争訟が含まれることになりますが,典型的にはコンピューターのシステム開発に関するトラブルを指すことが多いと言えます。

    このタイプの争訟の場合,発注者側の意図するところと受注者側の認識とに齟齬が生じた結果,受注者としては立派な完成品を納品したはずなのに,発注者からすれば全く使い物にならないという場合が出てきます。

    システムに関するプログラム著作物についてはバグが生じることがむしろ当然で,契約で定めた要件定義に従いつつ,当事者の追加協議も踏まえて善処するのが通例ですが,そもそもそのような微調整の段階に至ることができない程の重大な齟齬が結果として生じてしまう場合もある訳です。

    また,受注者側が真摯に業務を行ったにもかかわらず,要件定義の定め方が不十分であったことをよいことに,発注者側から事後的に注文を付けられた挙げ句,代金の支払を拒絶されるというケースも間々見られます。

    これらに共通しているのは,当初の契約時点での要件定義の具体化が不十分であるという点です。性善説に立つとすれば,当初決めきれなかったことがあっても事後的に協議で定めればよいということになるのでしょうが,実際に起きている多くの紛争例はそのような対応の限界を如実に表しています。

    受注者としても,既に多額の経費をかけて業務を行ってしまっているにもかかわらず,それによる成果物を放棄して,発注者の意図をその都度汲むことは非現実的でしょう。

    発注者としても,これからの修正には追加的に多額の経費を要すると言われれば,それは承諾し難いところとなります。

    そのため,契約締結時点では双方いかに良好な関係であるにしても,性悪説を意識して,要件定義を厳格に定めることが重要と言わざるを得ないのです。

    IT・システム開発関連紛争においては,いわゆるBtoB取引であるとは言え,受注者側は当該分野における専門家として,システム開発を主導しなければならない立場にあります。

    従って,要件定義の定め方が甘いことによる不利益もまた自ずから自己に降りかかってくるリスクが高いことを受注者側は認識しなければならないと言えるでしょう。

    他方,発注者側としても,受注者側の規模次第で人的戦力・資本力の投入には限界があることを意識して,無駄な作業をさせることなくピンポイントで業務を提供してもらえるよう,要件定義の具体化には慎重になるべきと言えます。

    なお,契約書上の要件定義の定め方が甘いケースにおいては,当事者双方の合理的意思がどこにあったのかを当時の協議状況を踏まえて探る必要が出てきます。

    この作業を事後的に行う上で重要なのは当時の議事録や議事メモ,連絡メール等です。議事録に双方署名捺印できればよいのですが,実際にはそこまでの作業はなかなかしづらいものです。

    議事録案に記載した内容で問題ないかとのメールでのやり取りだけでも,事後的には十分な証拠となる場合があるので,ステップ毎の意思確認を忘れずに行って頂きたいと思います。

    田島・寺西法律事務所
    弁護士 田島 正広


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  • 2014/04/28 知的財産 『特許発明の共同研究開発における留意点』(田島正広弁護士)

    特許発明の共同研究開発における留意点

    特許発明の共同研究開発を行うに際しての留意点について,以下概論します。

    1 共同研究開発と独占禁止法

    共同研究開発は,
    ①研究開発のコスト軽減,リスク分散又は期間短縮
    ②異分野の事業者間での技術等の相互補完等
    により研究開発活動を活発で効率的なものとし,技術革新を促進するものであって,多くの場合競争促進的な効果をもたらしますが,しかし,それは複数の事業者による行為であることから,研究開発の共同化によって市場における競争が実質的に制限される場合もあり得ないではありません。

    また,共同研究開発それ自体には問題がないとしても,その実施に伴う取決めによって,参加者の事業活動を不当に拘束し,共同研究開発の成果である技術の市場やその技術を利用した製品の市場における公正な競争を阻害するおそれを生じる場合も懸念されます。

    そこで,共同研究開発が競争を阻害することなく,競争を一層促進するものとして実施されることを期待して,「共同研究開発に関する独占禁止法上の指針」(以下,「共同研究開発指針」という)が公表されるに至っています(平成5年4月20日制定,同17年6月29日及び22年1月1日改定)。

    共同研究開発指針は,基礎研究,応用研究及び開発研究の全ての段階における共同研究開発に適用されます。また,この指針により共同研究開発に関する独占禁止法上の問題が判断されるのは,原則として共同研究開発契約締結時点ですが,共同研究開発の成果の取扱い等について,その時点においては定められない場合には,それらが取り決められた時点で独占禁止法上の問題が判断されることになります。

    2 研究開発の共同化に対する独占禁止法の適用について

    研究開発の共同化に対する独占禁止法違反の判断に当たっては,
    ①参加者の数,市場シェア等
    ②研究の性格
    ③共同化の必要性
    ④対象範囲,期間等
    を総合的に勘案することになります。

    なお,上記の問題が生じない場合であっても,参加者の市場シェアの合計が相当程度高く,規格の統一又は標準化につながる等の当該事業に不可欠な技術の開発を目的とする共同研究開発において,ある事業者が参加を制限され,これによってその事業活動が困難となり,市場から排除されるおそれがある場合に,例外的に研究開発の共同化が独占禁止法上問題となることがあります(私的独占等)。

    3 共同研究開発の実施に伴う取り決めに対する独占禁止法の適用について

    共同研究開発の実施に伴う取決めが市場における競争に影響を及ぼし,独占禁止法上問題となる場合があります。

    すなわち,当該取決めによって,参加者の事業活動を不当に拘束し,公正な競争を阻害するおそれがある場合には,その取決めは不公正な取引方法として独占禁止法19条の問題となります。

    また,製品市場において競争関係にある事業者間で行われる共同研究開発において,当該製品の価格,数量等について相互に事業活動の制限がなされる場合には,主として独占禁止法3条(不当な取引制限)の観点から検討されることになります。

    (1) 共同研究開発の実施に関する事項

    原則として不公正な取引方法に該当しないと認められる事項としては,
    ①研究開発の目的,期間,分担等(業務分担,費用負担等)を取り決めること
    ②共同研究開発のために必要な技術等(知見,データ等を含む。以下同じ。)の情報(共同研究開発の過程で得られたものを含む。以下同じ。)を参加者間で開示する義務を課すこと
    ③(②で)他の参加者から開示された技術等の情報に関する秘密を保持する義務を課すこと
    等が挙げられます。

    他方,不公正な取引方法に該当する虞がある事項としては,
    ①技術等の流用防止のために必要な範囲を超えて,共同研究開発に際して他の参加者から開示された技術等を共同研究開発以外のテーマに使用することを制限すること
    ②共同研究開発の実施のために必要な範囲を超えて,共同研究開発の目的とする技術と同種の技術を他から導入することを制限すること
    が挙げられます。

    また,不公正な取引方法に該当する虞が強い事項としては,紛争防止や共同研究開発への専念に必要な範囲を超えて,
    ①共同研究開発のテーマ以外のテーマの研究開発を制限すること
    ②共同研究開発のテーマと同一のテーマの研究開発を共同研究開発終了後について制限すること
    ③既有の技術の自らの使用,第三者への実施許諾等を制限すること
    ④共同研究開発の成果に基づく製品以外の競合する製品等について,参加者の生産又は販売活動を制限すること(一般指定第12項(拘束条件付取引))等
    が挙げられます。

    (2) 共同研究開発の成果である技術に関する事項

    原則として不公正な取引方法に該当しないと認められる事項としては,
    ①成果の定義又は帰属を取り決めること
    ②成果の第三者への実施許諾を制限すること
    ③成果の第三者への実施許諾に係る実施料の分配等を取り決めること
    ④成果に係る秘密を保持する義務を課すこと
    ⑤成果の改良発明等を他の参加者へ開示する義務を課すこと又は他の参加者へ非独占的に実施許諾する義務を課すこと
    が挙げられます。

    これに対して,不公正な取引方法に該当する虞が強い事項としては,
    ①成果を利用した研究開発を制限すること(参加者の研究開発活動を不当に拘束するものとして公正競争阻害性が強い(一般指定第12項(拘束条件付取引))
    ②成果の改良発明等を他の参加者へ譲渡する義務を課すこと又は他の参加者へ独占的に実施許諾する義務を課すこと(一般指定第12項(拘束条件付取引))
    が挙げられます。

    (3) 共同研究開発の成果である技術を利用した製品に関する事項

    原則として不公正な取引方法に該当しないと認められる事項としては,
    ①成果であるノウハウの秘密性を保持するために必要な場合に,合理的な期間に限って,成果に基づく製品の販売先について,他の参加者又はその指定する事業者に制限すること
    ②成果であるノウハウの秘密性を保持するために必要な場合又は成果に基づく製品の品質を確保することが必要な場合に,合理的な期間に限って,成果に基づく製品の原材料又は部品の購入先について,他の参加者又はその指定する事業者に制限すること
    ③成果に基づく製品について他の参加者から供給を受ける場合に,成果である技術の効用を確保するために必要な範囲で,その供給を受ける製品について一定以上の品質又は規格を維持する義務を課すこと
    が挙げられます。

    ①及び②で,「合理的な期間」は,リバース・エンジニアリング等によりその分野における技術水準からみてノウハウの取引価値がなくなるまでの期間,同等の原材料又は部品が他から入手できるまでの期間等により判断されます。

    他方,不公正な取引方法に該当する虞がある事項としては,
    ①成果に基づく製品の生産又は販売地域を制限すること
    ②成果に基づく製品の生産又は販売数量を制限すること,並びに,上記例外事由によることなく(→③~⑤)
    ③成果に基づく製品の販売先を制限すること
    ④成果に基づく製品の原材料又は部品の購入先を制限すること
    ⑤成果に基づく製品の品質又は規格を制限すること
    が挙げられます。

    また,不公正な取引方法に該当する虞が強い事項としては,成果に基づく製品の第三者への販売価格を制限することが挙げられます(一般指定第12項(拘束条件付取引)。


    田島・寺西法律事務所
    弁護士 田島 正広


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